このページの本文へ

人気の新書の筆者に迫る

『ビジネス寓話50選』 100年前の物語「寓話」がなぜ今?

2012年12月30日 01時18分更新

文● アスキー新書編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

心に何か引っかかる寓話を優先

――寓話のセレクションの基準は?

山田 ○○という解説を載せたいから、××という寓話を選ぼう、みたいな調整はしませんでした。とにかく優先したのは、まず、寓話単体として面白いことと、読んだ後に心に何か引っかかる、ということ。

 企業のコンサルティングをするときも、先に理屈から考えるのではなくて、社員の方に集まってもらって、自分が輝いた瞬間や幸せだった瞬間をお互いに語り合ってもらい、それを抽出するという手法をとることが多いんです。そういう意味では、博報堂ブランドデザインのフィロソフィとも合致した一冊ですね。

宮澤 「こうだろう」という仮説を立ててから入るとつまらないものになる。仮説を持たずに調べてから、気づくことを大事にしています。どうなるかわからないけど、寓話を集めてみたら、面白いものがたくさん見つかった、というのが正直な部分でもあります。

 同時に刊行したビジネスは「非言語」で動くという新書があるのですが、その本で述べていることが、「言語にならないことにこそ、潜在的なチャンスが隠れていて、ビジネスの宝の山になる」という本です。なんとなく言葉にできないけど、気にかかることが実は重要だったりします。そもそもビジネスそのものが、そういう側面を持っていたのに、経営の効率化やスピード重視の中で忘れられている状況が10年くらい続いて、限界にきているのかな、と。

――ひとつひとつの寓話に、ビジネスの視点からの解説があることが、寓話の味わいを深くしてるように思えます。

博報堂ブランドデザイン ボヴェ啓吾さん

ボヴェ 最初は寓話を並べるだけでも、面白いかなと思ってたんですよ。でも、寓話を集めて、みんな議論してみるといろんな解釈が出てきて、新しい発見がある。そういう意味で、掲載した解説を押し付ける気持ちはまったくありません。

 ひとつひとつに解説があることで、逆に「いや、そうじゃないんじゃないの?」という考えが浮かんだり、違う読み方をしたけど解説を読んで、「そういわれてみれば、そういう見方もあるな」と思ってもらえると、いいなと思ってます。

山田 どういう解説をつければいいんだよ! みたいな寓話も少なからずありました(笑)。また、解説がうまく書けないときに、「やっぱり解説付けなくていいんじゃないか?」と何度も思いましたけどね(笑)。でも、そんな寓話でも、チームのみんなと一緒に議論してみると、解き明かせるものがあるんです。最初に読んだときに、心に引っかかった理由が、最終的にわかってくる。

宮澤 本書に掲載した解説でも、我々スタッフの中でも違った視点を持つ者もいます。僕はこう見るけど、彼らはこう見るんだな、とかということが分かったのも制作するうえで面白かったことですね。

 僕らの仕事は形のないものに意味をつける仕事なんです。たとえば、ブランドにはたいていマークがつきものです。これを作るときに僕らは「先進性を見てほしい」とか「技術力の高さを見てほしい」と思いを込めて作ります。でも、それを見て「嫌だな」と思う人もいる。それを見て「楽しいな」とか「明るいな」とか思う人もいる。  マークを見ると、人それぞれの解釈ができるわけですが、そこにはちゃんと元の狙いがありつつ、多様性を持って理解ができるというのが、強いブランドのいい作り方なのかな、と。

 そういう意味ではブランドと寓話は作り方が意外と似ていますね。作った人には狙いや趣旨があるけれども、それと外れたところで人に反応を与えることがある。芯がありつつ、柔軟性がある、というものがいい寓話のポイントなのかなと。

■Amazon.co.jpで購入
■Amazon.co.jpで購入

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ