データ通信の従量課金に戻る事業者も
ユーザーごとの使い方が全然異なる
トラフィックが増えるとオペレーターはまず、堅牢なネットワークの構築が優先課題になる。LTEへのアップグレードなど設備投資への負担に苦しむオペレーターの中にはデータ定額制から従量課金に戻るところもあり、LTEで先行した北米、最近では香港でも従量制へ流れる動きが見られる。
その背景にはユーザーの利用の仕方に大きな違いがあり、一律的な課金プランでの対応が難しいことがある。たとえばEricssonの調べによると、テザリングを利用するユーザーは利用しないユーザーと比べると最大で20倍のトラフィックを利用しているという。また、テザリングユーザーはテザリングを利用していないときも、データ利用が多いヘビーユーザーであることがわかった。
オペレーターの中には、サービス強化を図るところもある。よく言われる“土管化(ダムパイプ)”を回避するためだ。ユーザーがSMSの代わりにFacebookメッセージやSkypeチャットなどに流れたために、オペレーターの収益にとって長年重要な柱となってきたSMS市場が減少に向かうというレポートもある。なお、Skypeのようにネットワークの上でコミュニケーションサービスを展開するプロバイダーはOTT(Over The Top)と呼ばれている。
通信技術の最新動向を紹介したEricsson業界担当副社長を務めるJorgen Lantto氏が触れたのは、「Voice over LTE(VoLTE)」と「Rich Communication Suite(RCS)」だ。
データ利用が増加するトレンドの中で、音声サービスが重要な背景には、LTEを利用する端末がスマートフォンという“電話”であるためだ。だが、LTEはデータ通信に主眼を置いて設計されており、2Gと3Gで音声通話を支えてきた回線交換(CS)機能を持たない。そこで、パケット交換(PS)つまりIPで音声サービスを実現する技術として3GPPなどが標準化を進めてきたのがVoLTEとなる。
メリットは音声とデータが同じネットワーク上であるという効率化だけではない。「IPベースなので、音声品質を改善する最新のコーデックを統合できる」とLantto氏。また、電力効率も大きなメリットだ。「3Gのときは2Gと比べて通話可能な時間が減った。だが4Gではチューニングにより最大50%の改善も可能」という。バッテリー利用時間は端末メーカーにとって最大レベルの課題だ。このような特性があることから、端末メーカーによるVoLTEへの関心も高いという。
RCSはVoLTEの先にあるマルチメディアとなる。IPベース(IP Multimedia Subsystems)のメリットを生かし、動画、プレゼンス、IM、ファイル転送などの機能を追加し、リッチな音声通話を実現できる。これはOTTとの対抗という意味でも重要な技術になるとLantoo氏はみる。「通信サービスをいまの時代に即したものにする。品質の点でOTTプレイヤーと大きな差別化が図れる」(Lantoo氏)
これらのサービスはすでに商用段階に入りつつあり、VoLTEは6月、韓国のSK Telecomが開始しているほか、RCSについてはスペインの主要オペレーター3社が11月末、「Joyn」という名称でサービス立ち上げを発表している。RCSをサポートした端末は2013年に登場を見込むという。イベント中、講演を行った地元ブラジルのオペレーターClaroのもRCSを利用してOTTに対抗したいと期待を語った。