巧みにメーカー間のバランスをとるGoogle
とはいえMotorolaの赤字はいつまで許される?
Androidは多数のベンダーに支えられており、現時点ではSamsungが引っ張っている。OHA設立以来、Googleはこれら複数のベンダーとうまく協業関係を持ってきた。そういったことから、同社が2011年にMotorolaの買収を発表した際はベンダーとの関係にどのような影響を及ぼすのかと懸念された。だがこれまでのところGoogleはMotorolaをひいきするようなことはなく、実際にMotorolaは製品や技術面、業績のいずれの面からも、他社の脅威になるような存在ではない。
たとえばGoogleブランドのNexus端末だ。GoogleはここでもLGを選択した。余談だが、この端末(「Nexus 4」)はベラルーシのWebサイト、フランスLe Figaro、英携帯電話チェーンのCarphone Warehouseなどの多数のリークがあり、未発表とはいえ情報(Android 4.2搭載、4.7型、クアッドコア1.5GHz動作のSnapdragon S4など)がかなり広まっていた。
さらには、Wiredの記事によるとサンフランシスコの中心地にあるバーでGoogle社員が、それと思われる端末を忘れていったという事件があったようだ(どこかで聞いたような話だが、このバーの店員によると週に20台ものスマホの忘れ物があるのだそうだ)。Wiredの記事が正しければ、置き忘れた社員はクビになった模様だ。
Nexusスマートフォンを見ると、初代はHTC、その後2機種はSamsungが製造した。4機種目はLGなので、Googleのバランス感覚はなかなかのものといえるだろう。だが、125億ドルをはたいて買収したMotorolaに中立性を持つことに対して、株主らがいつまで黙っておくのかはわからない。第3四半期の業績でMotorolaは営業損失5億2700万ドルを計上、これにはリストラなど再編にかかる3億4900万ドルが含まれているが、それを差し引いても1億7800万ドルの赤字が残る。営業損失のうち端末関係は5億500万ドルとなっている。
Googleが買収発表時に述べていた「(Motorolaの特許取得により)Androidエコシステムを守る」という役割についても疑問が残る。Motorola/Googleは11月にアメリカで2件の特許訴訟(対Appleと対Microsoft)があるが、継続する特許訴訟での訴訟コストと効果についても精査できそうだし、訴訟は着実に事業に影を落としている。
ドイツでは一連の特許訴訟を受け、Motorolaの販売はかなり限定的になっている。WebサイトをみるとAndroidスマートフォンが2機種(RAZR iとRAZR HD)が並んでいるだけで、タブレットはない。同じ欧州でもイギリスと比べると寂しいラインナップになっている。
また、Googleのお膝元にありながら一部機種のOSの更新が遅れたこともユーザーをイライラさせた。たとえば2011年に投入したVerizon向けのLTEスマホ「DROID Bionic」では、Android 4.0のアップデート配信が遅れに遅れた。さらには10月には「Photon」「Electrify」などAndroid 4.1へのアップデートを行わない端末を発表、100ドルのキャッシュバック提供に踏み切ったが顧客の信頼を損ねたようだ。同社のブログには憤慨したユーザーから多数の書き込みが寄せられている。
Motorolaは再編計画でハイエンド重視の方向性を明らかにしているが、戦略が見えにくい状態がもう少し続くのだろうか。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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