電子書籍という論点が浮上
本をよく読む人はどれを買うべきか?
iPad miniが発表された同じ日、10月26日に日本でもKindleとKindle Storeによる電子書籍の購入が発表されました。米国に遅れること5年。いや、確かに日本では、電子書籍の取り組みは5年よりもはるか前からあったはずだったのですが。
タブレットとKindleが共存する環境が先に生まれた米国で、興味深い結果があります。2011年1月のJP Morganによる調査では、iPadユーザーの40%がKindleも所有しているというのです。iPadが発売されて約9ヵ月が立ったタイミングでの調査で、iPadがKindleの市場を奪うのではないかと予想されていましたが、結果はそうではなかったようです。
また、comScoreが米国のタブレットユーザー6000人に調査した結果によると、タブレットユーザーの男女比率は総じて半々になっているものの、iPadは男性に、Kindle Fireは女性により好まれているそうです。
iPadと共存する電子ペーパー版のKindle(現行の「Kindle Paperwhite」)、より女性に好まれるKindle Fireという結果は、600g以上のiPadしか提供されていなかった時代の話。400g前後のKindle Fireが女性に受け入れられる理由も分かるというところです。
しかしiPad miniは308gという、7型の他のタブレットよりもひときわ軽い重量で登場しました。長時間手に持って文字を読む前提となる電子書籍だけでなく、27万5000本のiPad向けアプリが利用でき、あのデザインとなると、男性だけでなく女性もiPad miniに魅力を感じるになるのではないでしょうか。年末商戦に向けての動きに注目したいです。
ただ、たとえiPad miniがKindle Fireキラーになろうとも、他のデバイスのKindleアプリでKindle Storeの本が売れて読まれれば、Amazonとしてはなんら問題ないというのが正直なところです。この点は、AppleやSamsungなどのデバイスメーカーとは違うロジックがあることを意味しており、Googleとしては見習いたい部分でしょう。
iPad miniはベゼルがブラックだけでなくホワイトも用意されており、本をたくさん読む人はホワイトを選んでおくと良いのではないか、と思います。あとは価格。Nexus 7よりKindle Fire HDの方が安い点は見逃せません。デザインと軽さなのか、1万円以上安い価格か、という選択は、少し頭を悩ませそうです。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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