聴く音楽は人によってさまざまだが、今回は独断と偏見で、Little Every Thing「恋をしている」、Beatles「I saw her standing there」、Eagles「How Long」、アイアンメイデン「Different World」、バディ・ガイ「I put a spell on you」と、あくまで筆者の趣味だけでクラシック音楽以外の再生ソースを5曲選んでみた。すべて5MB以下の圧縮形式のWAVファイルとした。
最終的な音楽再生はイヤフォンの素性や品質で左右されるので、家中にあるイヤフォンをすべてかき集め、CDAP付属品を含めた価格帯別に計7個のイヤフォンを選んで聴き比べてみた。中には少し古いモデルもあるが、後継機種も発売されているベストセラーモノを選んだつもりだ。
まず付属のイヤフォン(想定価格50~100円程度)は、前述したようにほとんど昔のAMラジオを聴いている感じだった。次に試したイヤフォンは、1万円以下で入手できるなかでは、価格性能比が圧倒的に高いと評判のビクター「HA-FXD70」。付属のイヤフォンとは大きく異なり、オーディオ感がバッチリ。低音はクッキリと輪郭が見える。若干誇張気味なほど低域にパワーがある感じだ。曲によっては、付属のイヤフォンではまったく分からなかったベーシストの存在が明快になり、手拍子なども極めてクリアだ。
次は1万円前後のベストセラー商品であるBOSE「IE2」。今回テストした中では唯一、外耳に押しこむタイプではないため、少し違和感はあったがナチュラルで聴きやすい。しかし、ボーカルがちょっと奥に引っ込み、ベースギターのサウンドは軽め。BOSEと言えばスピーカーの印象から、もっとパンチの効いたイメージを想像したが少し期待はずれだった。
次に試したのはカナル型で4つのドライバーを採用したソニー「XBA-4」。すでに生産終了したモデルだが、現在の実売価格は2万円前後。「新開発バランスド・アーマチュア・ドライバーを4基搭載」という過去の壮絶コピーに期待を抱いて聴いてみたが、音の輪郭が細くて神経質な音だった。どちらかと言うと繊細なラジオ的。これは大きく期待はずれだった。
昨今流行のカナル型と言えば、発売当初からカテゴリーのトップランナーだったシュアーのフラグシップ「SE5」の後継機種である「E500PTH」も試してみた。さすがはDAPの劣勢を物ともせず、極めて音楽的な再生をしてくれた。シュアー独特のパワー感溢れるライブ感が心地よい、好感の持てるサウンドだ。とても560円のCDAPとは思えない。
そして次は、最近購入したiPhone 5のオマケに付いてきたアップル「EarPods」。iPhone 5購入以来一度も使ったことがなかった。別売品として購入すると2800円のイヤフォンだがあなどるなかれ、これがなかなか素晴らしい。低音のブースト感がCDAPの低音レスとマッチしたのか、自然な感じの低音再生がグッドだ。少しこじんまりとはしているが極めてナチュラルで、ボーカルからハードロックまで極めてそれらしく再生してくれた。脱落しやすい装着感を除けば、今回ベストなイメージだ。
最後のイヤフォンは、多くのオーディオ雑誌でグランプリや金賞を総なめにしたAKG「K3003」。イヤフォンの頂点に立つオーディオ的にも、テクノロジー的にもフラグシップ的モデル。やはり伊達にグランプリをとっていないと納得させる音だ。音楽の輪郭は極めてクリア、ボリューム感も圧巻で、各楽器やパートの音の表現を繊細に再現しながらも音楽としてのまとまりも実現している。やはり買って間違いのない製品であることを再認識させてくれた。
昔流行った“一点豪華主義”と痛烈な皮肉を込めて、560円のCDAPに約200倍以上の値段のイヤフォンの組み合わせは非現実的ではあるが、極めて話題性のある楽しいコンビネーションだろう。たくさんの自己流の薀蓄も溢れてきそうだ。
CDAP付属イヤフォンを含めて、全部で7種類の2800円から13万円までのイヤフォンを、約3時間ほどかけてアコースティックからハードロックまで5曲を聴き比べた。極めて主観的な結論だが、ベストマッチはビクター「HA-FXD70」で、ベストコストパフォーマンスはアップル「EarPods」。現実的には意味があるようでないが、State of The Artは問答無用でやっぱりAKG「K3003」だろう。
ソニーのXBA-4やBOSEのIE2は、CDAP以外のDAP(KENWOODやBang&Olfsen、iPhone 5)ではそれなりのパフォーマンスだったのが、ウルトラ安いCDAPなどは、まったくの想定外という開発をしているのかもしれない。再生装置のアナログ回路のクオリティーをどん底まで落とすことで、改めてイヤフォンの別世界の実力を垣間見た気がした。アップルのEarPodsとビクターのHA-FXD70には最敬礼いたしました。
3時間のストレステストがたたったのか、その後CDAPは昇天し、2度と生き返らなかったことを原稿の最後に付け加えておく。「安物買いの銭失い」は、子供の頃に亡くなった優しいおばあちゃんから、毎日聞かされていた想い出深い言葉でした。(^_^;)
今回の衝動買い
アイテム:メーカー不明 カセットテープ型デジタルオーディオプレーヤー
価格:秋葉原の名も知らぬジャンク屋にて560円で購入
T教授
日本IBMから某国立大芸術学部教授になるも、1年で迷走開始。今はプロのマルチ・パートタイマーで、衝動買いの達人。
T教授も関わるhttp://www.facebook.com/KOROBOCLで文具活用による「他力創発」を実験中。
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