最新のAndroid採用学習機
既存の中国学習機メーカーに加え、名も無き新規メーカーもさまざまなAndroid搭載のタブレット型学習機をリリースしている。デザイン的には一般的なタブレットと同じ「黒枠+背面が銀色」のものが多いが、子供向けらしくパステルカラーの枠を採用した製品もある。
メーカーは新機種を出すごとに、CPUクロックは800MHzから1GHzへ、1GHzから1.2GHzへとクロック周波数の高い製品を投入し、最新の製品「U8」「U9」では、Cortex-A8ベースの中国製CPU「Telechips TCC8803」搭載している。
また、OSはAndroid 2.2からAndroid 2.3へ、ディスプレーも800×480ドット(WVGA)から1024×600ドット(WSVGA)や1024×768ドット(XGA)表示へと、製品投入ごとに順調にアップグレードしている。
デュアルOS搭載の学習機を使ってみる
今回は諾亜舟(Noah)というメーカーの「優学派U6」という製品を触ってみた。Androidと同社独自OS「諾亜Linux」のデュアルOS搭載が特徴で、起動中に画面隅に表示されるOS切替ボタンを押すことにより、旧来の学習機メニューとAndroidの画面が即座に切り替わる。操作感覚も微妙なもっさり具合も両OSモードでまったく同じだ。
同社サポートページにアップされている、それまでのLinuxモデルのソフトウェア資産が利用できないこと、説明書や製品ニュースなどでLinuxについての記述が一切無いことを見るに、素のAndroidと、それまで同社がリリースしたLinuxモデルに似せたメニュー画面やAndroid向けの動画、フラッシュコンテンツの再生ソフトなどを用意したものとなっているようだ。
疑似デュアルOSとはいえ、こうした試みは面白い。子供が勉強するときは学習機モード、息抜きのときや親が利用するときはAndroidモードと切替ができるので、実用的でもある。
他社も負けてはいない。老舗メーカーのひとつである好記星の「答疑王M16」は、オンラインで先生が学習の質問に答えるサポートセンターのような機能を搭載。また、同じく老舗メーカーの好易通がリリースする「無敵雲8」は、Android搭載でQWERTYキーボードを標準装備し、辞書をクラウドサービス化したことが特徴だ。
学習機市場の活性の源は高利益率
しかし今後は……
今までは学習機といえばWindows CE機ないしはLinux搭載機だった。しかしユーザー視点でみればAndroidについての知識・経験を持っている親が多く、またメーカー視点で見ても普通のタブレットを売るよりずっと利益がある(例えば、とあるタブレットが1000元未満で販売されているとして、それが学習機となるとまったく同じスペックでも2000元以上で売られている)のでAndroid搭載が標準となるだろう。
いつもの中国市場のパターンに照らし合わせれば、高い利益率を求めてさまざまなメーカーが参入し、粗悪品があふれ、粗悪品価格に合わせて老舗メーカーも価格を合わせ、価格崩壊が起きると予想する(そうはいっても、それを裏切り面白い製品が続々と出てくることにも期待している)。学習機においても相場が半額以下に価格が下がり、ずっと手に入りやすくなり、多くの子供たちがタブレットで勉強をしつつゲームをするようになるのではないか。
ちなみに、インドやベトナムなどでも学習機をチェックしたが、残念ながら中国に大きく水をあけられているどころか、中国産の子供向け英語PCが売られているだけである。
どうも教育用PCに関しては、親世代の商品ニーズがあり、技術力がある中国がガラパゴスな進化を遂げそうだ。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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