過激な言い方だが
情報という武器を持たない人は生き残れない
「スマホを持っていない人は人生を悔い改めてください。すでに時代から取り残されています」──ソフトバンクの孫社長は、同社が開催する法人向け展示会「SoftBank World 2012」の基調講演「iPhone、iPadによるモバイルインターネット時代のビジネス革新」の冒頭で、ビジネスパートナーや法人関係者が中心の参加者に語りかけた。続けて孫社長は、「坂本龍馬の時代は武士は全員大刀と小刀を装備しており、両方持っているからこそ戦えるのであって、どっちか片方しか持っていないのは達人か間抜けな人だ」とした。一見、過激な発言だが、現代社会において情報という武器を持たずに戦場(会社や取引先)に向かうことは負け戦に等しいという、いかに情報やそれを得るデバイスが大事かということだ。
また、戦国武将の織田信長がそれまで刀やヤリ、騎馬などを武器としていた戦に、鉄砲という新しい武器を積極的に導入したことで他の大名から抜きんでたという話を交え、「ソフトバンク急成長の陰には、iPhone・iPadといった“鉄砲”を早い段階から社内に取り入れたことがある」と語った。そう、ソフトバンクは約2万人の社員全員にiPhoneやiPadを支給し、ペーパーレスを実現させ、社員の生産性を向上させることに成功しているのだ。
現在、約15万社以上がiPhone、そして約6万社以上がiPadを導入しているという。しかし、これだけ普及してくると出てくるのがセキュリティーの問題だ。多くの企業が不安視しているセキュリティー対策に、ソフトバンクはどのように取り組んでいるのだろうか。孫社長は「端末を紛失してしまったときには遠隔操作でロックしたりデータを削除したりすることが可能であり、そもそもAppStoreはアップルによる厳しい事前審査があり、登録されているアプリはすべてその審査をクリアしたものだから、ウイルスに感染する可能性は低い」と自信を見せた。
「TwitterやFacebookなどで日頃から厳しく指摘される」(孫氏)という、ソフトバンクの電波の繋がりにくさだが、7月25日から順次始まるプラチナバンド(900MHz帯)で、それらのネガティブな点は払拭されるとのこと。電波の基地局も通常の4倍のスピードで建設しているとしながらも「いきなり全国でプラチナバンドになるわけではなく、工事が完了したエリアから順次スタートさせる」とのこと。「これから何年後かに、電波が繋がらないなんてこともあったよね、と懐かしんでもらうときがくるでしょう」と自虐ネタを飛ばし、会場の笑いを誘った。
講演の後半に、ソフトバンク創業の頃に赤字だった話へシフト。この赤字時代を救ったのが何を隠そう、情報革命だった。まず社内LANを構築し、社員にパソコンを支給、24時間以内に返事をしなければいけない稟議システムを構築した。決裁者の返事がなければ承認、というアグレッシブなルールで、普通の会社なら通すのに1週間や1ヵ月かかっていた稟議を1日に短縮し、スピーディーに動くことで赤字は黒字に変わっていったとのこと。
最後に再び武士の話に戻り、「武士は寝ているときでも刀を手に取れる範囲に置いていた。今の時代、9時5時で仕事をするだけでは、もはや戦えない。常にスマートデバイスを手に届くところに置き、情報武装をしておけば、仕事の効率もあがって、空いた時間は自分の趣味や家族との団らんに使える。ワークスタイルが変われば、日本の産業が競争力を失いつつある今、もう一度取り戻すことができる」と力強く講演を終えた。