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山谷剛史の「アジアIT小話」 第23回

GeForce GTS 250でOK!? 中国ゲーミングPCのスペック事情

2012年06月12日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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ゲームを楽しむネットカフェのPCは
3年前のスペック!?

中国のネットカフェの様子

 以前より見かけなくなったネットカフェだが、数軒入ってみると昼も夜も客でごった返している。客はオンラインゲームや動画を見ているが、そのほとんどが男性だ。

 利用価格はいずれも1時間4元(50円強)と安いが、これでも物価の上昇で数年前の1時間2元に比べて倍になっている。ネットカフェが実名制となった今、受付でパスポートを提示し、端末利用時に使用するIDを貰い(パスポート番号そのままの場合もある)、好きな端末の電源をつけ、教えてもらったIDでログインする。

 PC本体はパーツ屋に一括発注したらしき、メーカー製ではないロゴが書かれたタワー型PCで、キーボード・有線マウスのほかにウェブカメラがモニターの上に置かれている。

中国のPCケースメーカーの中にはネットカフェ向けケースを積極的に出すメーカーもある

中国のPCケースメーカーの中にはネットカフェ向けケースを積極的に出すメーカーもある

 本体はUSBメモリーや光学ディスク挿入を拒むため、また防犯のため、PCケースごと頑丈な金属ケースの中に入れられている。また別のネットカフェのPCは、頑丈な金属ケースの中に入れられているわけではないが、ケースに鍵がついていてやはり防犯仕様となっている。調べてみると、さまざまなメーカーが防犯に一工夫したネットカフェ専用のPCケースをリリースしている。

 本体スペックは、ゲーム利用が多いネットカフェにしては低い。あるネットカフェにあったPCは、「GeForce 9600 GT」や、元「GeForce 9800 GTX+」こと「GeForce GTS 250」を採用したビデオカードを装備し、CPUは「Core2 Duo E7300」や「Athlon II X4 630」など、3年前のミドルレンジ~ローエンドパーツとなっている。

 ネットカフェ同士で競争はあるが、スペックを必要とするゲームは遊ばれていないということか。確かにネットカフェで周囲を見渡せば、中華MMORPGを利用する利用客ばかりだった。

あるネットカフェのPC端末のスペック

あるネットカフェのPC端末のスペック

PCのデスクトップは、どこもだいたいこんな感じだ

PCのデスクトップは、どこもだいたいこんな感じだ

 デスクトップを見てみると一見シンプル。プログラムメニューはほぼ何もなく、利用可能なソフトはネットカフェ向けのランチャーソフトを経由する。エクスプローラーで中を見たり、コントロールパネルを出したりすることはできない。

 そのメニューを見ると、やはりゲームが目立つ。といっても中国のゲームだらけで、洋ゲーは「CounterStrike」や「World of Warcraft」など、随分前のゲームばかり。ハイスペックを要する洋ゲーはない。

 なるほど、これはハイスペックなPCを必要としないわけだ。ランチャーソフト内にビジネスソフトもあるが「Microsoft Office」ではなく、無料の正規版がある「WPS Office」(日本ではKingsoft Officeとして展開)を採用しているのは、ソフトウェアライセンスに関する意識の変化か。

ランチャーソフトの左上に蒼井空アイコンが……

ランチャーソフトの左上に蒼井空アイコンが……

 動画についても、中国のテレビドラマやハリウッド映画や日本のアニメなど豊富。日本のアニメの中には海賊版も多く含まれている。変わったところでは中国で一番検索される有名な日本人「蒼井空」(蒼井そら)のアイコンがあった。

 過去に「中国人と日本のアダルトビデオの密な関係」で書いた通りなのだが、とはいえ中国でポルノは御法度。どういうことかとクリックしてみれば、動画検索サイトでこのワードを入れた結果がウェブブラウザーに表示されるのだが、その検索結果はなんともいたって健康的であった。

ゲーミングPCはニッチ化していくのか?

 ポルノはさておき総括すると、もはや中国でコンシューマー向けのハイスペックなPCはゲームをするわけでもなし、動画をエンコードするわけでもなし、金稼ぎにもならない限りはニーズがあまり見あたらない。

 上海を筆頭に電脳街がどんどん縮小され、代わりにスマートフォン売り場となり、人々の興味もスマホに移りゆく中で、よりニッチになりそうだ。

七彩虹が近日発売予定のGeForce GTX 680搭載ビデオカード「iGame九段680」

七彩虹が近日発売予定のGeForce GTX 680搭載ビデオカード「iGame九段680」

 とはいえ、七彩虹などの中国産メーカーがハイエンドなGeForce GTX 680搭載ビデオカードもリリースしているのも確かで、決して市場がないということではなさそうだ。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)

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