まずは黒字化が必要なMotorola Mobility
一方の特許の面では、GoogleはMotorola Mobility絡みの特許でMicrosoftに敗訴している。ドイツのミュンヘン地方裁判所は5月24日、メッセージの送信手法についてMicrosoftの主張を認める判決を下している。これは、長いテキストメッセージを2回に分けて送り、受信時に合わせるという手法についての訴訟だ。Googleは控訴の構えを見せているが、Motorolaの買収目的の1つが特許だったことを考えると皮肉な結果ともいえる。
もう1つ課題を付け加えるなら、Motorola Mobilityの財務状況だ。同社は2011年に2億5000万ドルの損失を計上しており、Woodside氏が1番目の目標に掲げている黒字化を達成できない場合はGoogleの足を引っ張ることになる。ハードウェアとソフトウェアの事業体質は異なる。Appleのような垂直統合なしにハードウェア事業を軌道に載せられるのか、Woodside氏の課題は大きいようにみえる。
Androidに関するOracleによる
対Googleの訴訟はつまづく
次にAndroidを巡るOracle対Googleの訴訟をみてみよう。こちらは2010年8月にJavaの知的所有権を侵害しているとしてOracleがGoogleを提訴したことに端を発する。
4月中旬に始まった審理では、著作権、特許、損害賠償の3フェイズで進められてきた。第1フェイズの著作権では部分評決となり、AndroidがJavaのコード9行をコピーしているとして陪審員は著作権侵害を認めたが、著作権に紐付けされているフェアユースについては判断を避けた。
第2フェイズの特許については、Oracleは当初主張していた10件の特許を2件に絞り込んだにもかかわらず、侵害なしとの評決が下った。特許侵害が認められなかったため、損害賠償は著作権侵害が対象となるが、フェアユースが認められれば著作権侵害とは言えない。これについては、陪審団ではなく今回の訴訟を担当する判事のWilliam Alsup氏の判断を待つことになる。
Android関連の訴訟は多数あるが、Googleを直接狙ったのはOracleが初めてだ。だが今回の評決を見ると、当初61億ドルもの損害賠償を主張し、トップクラスの弁護士(Oracleは、Microsoft対米政府で司法省側の代理を務めたWilliam Boies氏を起用)を抱えて挑んだOracleの狙いは大きく外れたことになる。
だが今後も、Google/Motorolaを狙う訴訟は(継続中のものも含め)続きそうだ。なお、SamsungとAppleの和解交渉は決裂に終わったようで、Androidを巡るスマホ分野の訴訟合戦はまだまだ続く可能性が高い。GoogleはAndroidを守るというMotorola Mobility買収の目的を果たせるのだろうか。Motorolaのハードウェア事業とAndroidライセンスの2つを両立できるのだろうか。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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