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渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」第26回

「まどマギ」「タイバニ」テレビ局から見たヒットの背景【後編】

2012年04月01日 12時00分更新

文● 渡辺由美子(@watanabe_yumiko

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アニメは作り手とファンが影響を与えあって
生き物のように進化していく

―― 「魔法少女まどか☆マギカ」「TIGER & BUNNY」は、いずれもお約束やセオリーなどを逆手にとっているような、意外な作品になりましたね。たとえばタイバニでは、ヒーローものではあるのに主人公がベテランという。

丸山 たしかに。セオリーに縛られたら、普通に考えるのは、ベテランでなく、新米少年を主人公にしてしまったりすると思います。自分がもしゼロから脚本を書いたりしたら、そうしてしまうと思います。でも、全てのスタッフの方々が、そうした安定的な発想でなく、届けたいことや描きたいことを悩みつつ“産みだし、出てきたものだから面白いのかなあと。あと、両作品とも共通して、アニメ界でずっと活躍されて来た方と、別業界でも活躍されてきた方とが共存してつくられていますが、原作がないオリジナルの場合は、特に“アニメのセオリー”に縛られずに作っている人たちの想像力が、これまでにないアイディアを花開かせることがある。それを両作品から学ばさせていただきました。


―― 今までのセオリーを逸脱することも、オリジナルの魅力でしょうか。

丸山 そうですね。すべてのオリジナル作品は、できあがるまでどんな作品になるか分からないのが面白いです。企画書のときに予想していたイメージが、何百人ものアニメスタッフによって、作画されて、色がついて、声が入って、音楽が入ってと、それぞれが”想像力”を足していくことで、どんどん形を変えて生き物のように変化していく。

 2クール(半年)とか、放送期間が長いものになると、声優さんのキャラクターの芝居を聞いた後、それに影響されてシナリオや作画が変化していったりもする。そういう影響の与え合いが、絵や音それぞれの部門で起こっていくんですね。だから自分としてはそうした化学反応が、送り出すまでの過程の各所でたくさん起こる様に、人や会社や展開を組み合わせて、作品に様々な触媒を投入し続けられればいいなと。今後は、一見すると「混ぜるな危険」と思われる組み合わせにも果敢に挑める気持ちは持っていたいです。

 最近感じるのは、見ている方々の反応がネットなどを介して伝わってくると、その反応に影響を受けて、また作品が変わっていくこともしばしばあります。スタッフ、プロデューサーともにネットの反応を確認する方もしない方もいるので一概には言えませんが、オリジナル作品の“生き物感”は、ユーザーさんの方が与えてくれる影響もありえますね。


―― ファンの声もフィルムに反映されているんですね。

丸山 そうですね。オリジナル作品は、放送したときの“お祭り感”も強いなって思うんですよ。オリジナルの場合、どの視聴者でも情報量が全員平等なんです。放送と同時に横一線でその情報を知ることになるので、パンとフィルムが出てきたときに、同じ事象でサプライズがあるんですね。たとえばキャラクターが何か意表を突いた行動をしたら、みんながわっと盛り上がったり意見を言い合ったりするんだけど、それがほぼ同時に一斉に起こるんです。そこにお祭り感や一体感があるんじゃないかなと思います。

オリジナル作品は、視聴者-制作者にコール&レスポンスの関係がある「生き物感」ある作りになっているという

―― それは前回うかがった、テレビというメディアの持つ「偶発性」や「みんなが同じ情報を共有する」という特性とも親和性が高そうですね。

丸山 そうなんです。リアルタイムの放送というのは「ライブ」なんですよ。これもテレビの持つ意味の一つだと思うんです。生でその瞬間をみんなと共有してもらえるという。最近ではネットの生配信なども同じ良さがありますよね。そして、濃い見方として、1回目はリアルタイム、生で観て、2回目は録画でしっかり詳細確認みたいな。今の時代は、いつでも見られる環境が整いすぎてるおかげで、逆に“生”感やライブ感というものが見直されている時代だと思うんですけど、テレビには、そうした楽しさがあると思います。


―― みんなが同じスタンスで同じものを共有するということですね。

丸山 そうですね。オンエアと同時にTwitterや各種サイトで一斉に実況が始まっていたりして。そうやってお祭り的にみんなで一緒に観るのって楽しいじゃないですか。毎度毎度、スタッフも我々も想像もしなかった感想、意見ばかりで、やっぱり送り出してからしか分からないことだらけです。

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