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山谷剛史の「アジアIT小話」 第16回

中国版「おはなしのくに」がスマホと同人文化で復活!?

2012年03月06日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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「評書」から広がる読み聞かせコンテンツ

元ソニーの出井氏も听書機や評書文化を評価しているとか

 語り聞かせを意味する「評書」と同じ意味で「有声小説」という言葉も近年登場している。評書は伝統的な物語の読み聞かせではあるが、有声読書の対象とする範囲はずっと広く、人気小説から同人小説まであらゆるジャンルをカバーしている。

 語り聞かせコンテンツを聞きたいのなら、「百度中国」などで「評書」や「有声小説」をキーに検索すれば多数専門のサイトが確認できるし、またスマートフォン用のアプリにおいても、「評書」「有声小説」に特化したアプリもいくつも見つかる。

 聞けるジャンルは古典はもちろん、定番の「武侠」と呼ばれる歴史小説から、恋愛小説、お目こぼしギリギリの官能小説までなんでもござれだ。

 テキストデータ同様、海賊版の訴訟騒ぎもあった。訴訟を繰り返した結果、音のコンテンツに関しても版権の有るものが基本となった。再生時に動画サイト同様、広告が配信されることで、デジタル語り聞かせビジネスが成り立っている。

試み的には面白い「愛听話」

試み的には面白い「愛听話」

 語り聞かせをテーマにした面白いサイトもある。例えば「愛听話」というサイトではポイント制を導入。自ら物語の語り部となってコンテンツをアップすれば、ポイントが貰えてそれを元にサイトにアップされている別のコンテンツを聞くことができる。シャイな日本人にはなかなか導入が難しそうなサービスだ。

 ちなみに、普段同人レベルの語り聞かせを聞かない人に、この素人コンテンツを聞かせてみると、語り部のプロとあまりにも掛け離れているため「聴いていて恥ずかしくなるレベル」と笑っていた。

 では、プロはどんな人かというと、例えばラジオ番組のアナウンサーなどがそうであり、プロによる良コンテンツを多くの人が聞いてきた。だから語り部として認められるにはなかなかハードルは高い。

 愛听話などのポイント制有声読書サイトで、複数人が聴けば、その聴かれた分だけ小遣いがもらえる。さらに多くの人に認めてもらえればやがてプロになれて稼げるため、声優専門学校ではなく語り部専門学校なんてのもできているのだ。

 そうした専門学校では平均月収の倍以上となる「5000~1万元(約6万~12万円)稼げる!」なんて書いてあるが、眉唾の参考情報程度で。

さらなる新サービスに期待

 ブロードバンドと同人文化で「評書」「有声小説」が復活をし、さらに人々に身近なものとなった。

 目の不自由な人々にとって、コンテンツが充実する中国では「便利な世の中」になってきたといえよう。

 スマートフォンが普及すると同時に、クラウドサービスが中国で次々に登場する中、今後はどのような「中華流読み聞かせサービス」が登場してくるのだろうか。ちょっと気になるジャンルである。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)

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