世界の工場中国。その中でも工場が集中する広東省。そこではMP3プレーヤーが大工場から町工場まで様々な場所で生産されている。
海賊版問題でアメリカからWTOに提訴され、日本やEUがそれに参加しても、この工場地帯ではどこ吹く風か。今日も「それデザインがパクリじゃないですか」という製品を生み出しつづけている。
そんな広東省のMP3プレーヤーメーカーの業界紙を入手したので紹介したい。そこではどこかで見たようなMP3プレーヤーの写真がこれでもかとあり、ただただ驚愕の連続である。
なんか似てませんか?
まず紹介したいのは、リンゴマークの某メーカー製品そっくりのMP3プレーヤーだ。アキバにもたまにこの種の製品が入荷されるが、本場中国はそんなもんじゃない。
中国では長い間“激安MP3プレーヤー”の勢力が強かったが、ようやっと『iPod』をはじめとした“ブランドモノのデジタルオーディオプレーヤー”が注目され始めた。中国人にとってはプレミアムなデジタルガジェットという位置付けだ。一方でそれがブームとなれば、それに追随するかのように類似品がリリースされる。電脳街や大型電器店チェーンに行けばビミョーな外観の製品をちらほら見かけることができるだろう。
MP3プレーヤーメーカーが集う本場広東省の業界紙を見れば、これがただごとではないことは想像できよう。これを見た後はどれが本物のiPodかわからなくなるかも!?
ところでこういった製品をどこで買うことができるのかというと、残念ながら工場からの卸売りのための業界紙なので単品購入はできない。中国の電脳街でもすべてを拝むのはまず無理だ。
まだまだあるパチモノ
同じ業界紙には、他社ブランドそっくりの製品も掲載されていた。例えば、中国業者の真似したくなるデザイン(?)にノキアの携帯電話がある。
意外にもパナソニックのSDオーディオプレーヤーや、ソニーの“ウォークマン”など日本のシリコンオーディオプレーヤーに似た製品は、東芝gigabeat以外はなかった。真似しにくいのか、まねするほど認知されておらず、魅力が薄いためなのか、真偽は分からない。
“パチモノ”ばかりを紹介したが、この業界紙の中で最も多いモデルは、秋葉原でもノンブランドでよく見かける、スタンダートなスティック型タイプや、長方形タイプであった。ただパチモノと上記のスタンダートタイプだけでなく、ほかにも変なデザインのものや、変わったコンセプトの製品も中にはある。そういったものも紹介しておこう。
すべてが、すべてではない
最後に小話的に。中国というと、ことノンブランド製品に関しては、うさんくさいイメージが正直あると思う。
例えば今年3月にドイツで行なわれた“CeBIT”には、中国最大の周辺機器メーカーで、MP3プレーヤーメーカーでもある“愛国者”(aigo)のMP3プレーヤーが槍玉に上げられた。MP3関連のライセンス管理を行なっているイタリアのSisvelに対し、愛国者がライセンス料を払ってないとして、ドイツの税関で差し押さえられたのだ。結果として、愛国者はCeBitにブースは設けたが製品を展示できないという事態となった。
しかしこれには後日談もあって、実は愛国者がMP3のライセンス料を払っていたという事実が、CeBITが終了して時間の経過した4月末に分かった。これに対してドイツ税関は謝罪している。
確かに中国の多くのメーカーが正当なライセンス料金を支払っていないということが中国のIT系ウェブメディアのニュースでも伝わっている。が、中にはちゃんとやるべきことはやっている会社もあるわけだ。今回紹介した製品をアキバでも販売したい、販売してほしいという声もあるかとは思うが、実際日本に輸入するとすれば、ちゃんとやることをやっているメーカー、製品なのかどうかを確認しなくてはならないだろう。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。