「こうありたい自分」と研鑽のエネルギー
この文章を読んでいる読者の皆さんも、自分自身が抱えているトラブルや憂えていることと内容を対比させておられるのではないかと思います。また、多くのジレンマと戦うことは、自分自身の心をすり減らすことでもあります。
抱えた部下が働かず、チームメンバーから弾かれているとき、リーダーとしてどう対処するべきか。限られた予算の枠内で最大限の成果を出すためにどのような振る舞いをしたら良いのか分からない。あるいは、仕事に向かう自分自身のモチベーションをうまく管理できず、仕事に集中できない。仕事をしているすべての人が抱える問題点が、ここにあります。
仕事を巧く回し、自分自身もしっかりと役割をこなしていくためには、どういう自分になっていくべきか。理想とする自分像と、現実の自分の落差こそが、私たちを取り巻く問題のひとつです。何より、ものの本を読んで感心し、「これからは自分も取り組んでみよう」と思うことの大半が習慣化させられず、せいぜい数日から数ヶ月の努力で終わってしまう自分のだらしなさばかりが思い返されるのが人生なんだろうと思います。
だからこそ、しっかりと自分と向き合って、自分がどうしたいのか、こうありたい自分を見極めることが大事なのです。思った以上に弱すぎるという反省もたくさん出て、思い返すだけでストレスとなり辛い思いも次々と浮かんでくるでしょう。そんなドロドロの、タールの海のような悲しい過去も見据えて、でも自分が生きてきた道筋の先にどういう光が見えるのか、目を凝らしていく時間を作ってこそ、自己の客観視が可能となり、集団の中の自分のポジションを認識し、どこへ向かっていくことが自分の本懐であるのかを知る手がかりとなるのです。
【筆者プロフィール】 山本一郎(やまもと・いちろう)
1973年、東京生まれ。96年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2000年、IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作を行うイレギュラーズアンドパートナーズ株式会社を設立。ベンチャービジネスの設立や技術系企業の財務・資金調達など技術動向と金融市場に精通。「切込隊長」名義でブロガーとしても活躍した。著書に「情報革命バブルの崩壊」(文春新書)、「ネットビジネスの終わり」(VoiceSelect)など。
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