GPU黒歴史の1回目は3dfxの「VSA-100」について解説した。しかし3dfxの場合、VSA-100以前に見事な黒歴史製品と言われてしかるべき、「Voodoo Rush」という製品があった。3dfx社内での型番は「SST-96」で、これは「SST-1」という型番だった初代「Voodoo Graphics」をベースにしたものである。
2Dを持たないVoodooの欠点解消を狙う
前回も少し説明したが、最初の製品であるSST-1ことVoodoo Graphicsは、3D表示の機能のみを持っていた。そのためVGA互換の2Dビデオ表示は不可能だったから、別にVGA互換のグラフィックスカードを組み合わせて使う必要があった。ゲームマニア向けにはこれでも問題はなかったのだが、もう少し販路を広げようと考えると、やはり2Dグラフィックスカードが別に必要というのは、なかなか問題が多い。そこで、「1枚のカードの上にVoodoo Graphicsと、VGA互換の2Dグラフィックチップを搭載すればいい」という発想が出てくる。
Voodoo GraphicsはTSMCの0.5μmプロセスで約100万トランジスタ構成。これがVoodoo Rushではやや微細化して、TSMCの0.35μmプロセスを利用可能だった。それでも2Dまで含めてワンチップ化するのは、当時の回路技術的に不可能だったようで、素直に2Dと3Dが別々のチップとして構成された。もっとも、後に登場した「Voodoo Banshee」は、同じTSMCの0.35μmプロセスで2Dと3Dをワンチップ化して提供したから、技術的に無理というわけではなかったようだが。
さて、Voodoo Rushの構造は図1のようになっている。低価格向けを狙う製品構成上、必然的に低コスト化が必要である。これを実現するために、2Dグラフィックのフレームバッファーは「PUMA」(Pseudo Unified Memory Architecture)と呼ばれる方法を使い、3Dのフレームバッファーと共用するという仕組みを取っている。
この当時、グラフィックスカードに関わる業界標準団体だった「VESA」が策定した「VUMA」(VESA Unified Memory Arbitrator)という規格があった。これはPCのメインメモリーを、グラフィックスカードがフレームバッファーとして使えるようにするためのものである。PUMAはこのVUMAのプロトコルを流用し、メインメモリーではなく3D用のフレームバッファーを2Dと共用できる仕組みを用意した。これによって、2Dと3Dで別々のメモリーを搭載する必要がなくなり、その分コストダウンが可能になった。
また、2Dと3Dそれぞれが独立でPCIバスを持つ構造だと、この2つを1枚の基板に搭載する場合には、図2のように間にPCIブリッジを搭載しなければならない。この時期だとDECの「21150」というPCI-to-PCIブリッジがよく使われていたが、パッケージはかなり大きく、コストも当然それだけ増えることになってしまうので不利である。そこでVoodoo Rush側に2Dグラフィック用の専用インターフェースを用意し、2Dグラフィック側のPCIを利用してPCに接続するという、割と手の込んだ構成になった。
ただ悲しかったのは、ここまで作りこんでおきながらも、当時の3dfxには2Dグラフィック側を提供する技術を、持ち合わせていなかったことだ。そのため2Dグラフィックは外部供給に頼ることになり、台湾Macronix International(MXIC)の「MX86251」か、米Alliance Semiconductorの「AT25」というグラフィックチップが利用されることになった。
余談であるが、現在ではMacronixはメモリーチップのみを提供するベンダーになっており、Alliance Semiconductorも業績が伸びず、2006年にTundra Semiconductorに買収されるといった経緯をたどっている。ようするに、どちらのベンダーの製品も、2Dグラフィックで成功した製品とは言えなかったわけだ。
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