独自UI「HTC Sense」は製品の差別化と同時に
HTC端末をすべて同じように見せている?
もう1つの課題は端末、つまり製品側だ。HTCの主張によると、全米でNo.1のスマートフォンメーカーであり、携帯電話全体でも世界市場でResearch In Motionをおさえて4位にまでランクアップしてきた(2011年第3四半期、IDC調べ)。シェアは10.8%、前年同期の7.1%から3.7ポイントアップしている。
では何が問題なのだろうか? HTCはAndroid向けに「HTC Sense」というUIを開発し、Android端末に搭載している。Androidスマートフォンの多くが同じようなフォームファクターを持つ中で、HTC Senseは差別化となっており、同社のブランド戦略に大きく寄与してきた。
だが、数年が経過した現在、HTCのスマートフォンを並べてみるとどれも似た感じになってしまった(ハードウェアキーが少なくなった分、外見で特徴を持たせることは、ますます難しくなっているように見える)。年間数十機種を投入するHTCだが、ユーザーから見ると機種の見分けがつきにくく、特徴がわかりにくくなってきた。
同じUIを維持することは、安心感と倦怠感の両方の作用がある。販売台数が低下している背景に、HTC端末のユーザーがHTCに乗り換えるより、iPhoneやSamsungの「GALAXY」シリーズなどに移っているというのがあるのかもしれない。Android端末が見分けがつかないというのは新しい指摘ではない。だが、Motorolaは薄型端末の象徴とも言える「RAZR」の復活などで端末ラインナップの多様化を図っている。根強いファンに支えられているHTCも、少し冒険する時期にさしかかっているといえそうだ。
以上はスマートフォンが普及してきた成長市場での課題。これとは別に、中国などの途上国市場に向けた戦略もこれまで以上に重要となりそうだ。中国は第3四半期にスマートフォンの出荷台数でアメリカを上回り、世界最大市場となった。ここではZTEやHuaweiなどの中国ベンダーも無視できない。
来年のHTCは次の一手を打ってくる?
HTCの現状からは、2012年夏までに何らかの新しい製品戦略が出てくることが予想できる。同社はクラウド/同期サービスのDashwire、ヘッドフォンのBeats、子供向けアプリのZoodlesなどの企業買収を進めており、これらが製品戦略に反映されていくと考えられる(また、うわさが再燃しているFacebookフォンでも、HTCの名前が挙がっている)。スマートフォンはいまだ戦国時代のまっただ中、HTCが長期的に上位ベンダーとしての地位を維持できるか正念場となりそうだ。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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