Androidの波に乗ってスマートフォンのトップブランドに躍り出た台湾のHTCだが、11月末に今期(2011年10~12月期)の見通しを下方修正した。6期連続で対前年の四半期で出荷台数を増やしてきたHTCだが、2012年夏までは低調が続くと予想している。危険信号が点灯し始めたのか、一過性のものなのか、HTCが抱える課題はなんなのだろうか。
急成長を続けてきたHTCだが
2011年第4四半期は前年並みと予想
HTCは11月23日、第4四半期の業績を修正し、前年とほぼ同じで横ばいになるとした。これは、10月31日に公開していた前年同期比20~30%増という予想を下げるものとなる。当時は出荷台数について、1200万~1300万台と予想、第3四半期の1320万台から減少する見通しを示していたが、出荷台数見通しについては11月の発表では触れていない。HTCは2010年第2四半期から常に前年の四半期を上回るペースで出荷してきたが、予想どおりであれば1年半ぶりとなる。
HTCは原因として、アメリカでの需要が減速していること、世界経済動向、市場の競争の激化などを理由に挙げている。第4四半期は年間を通じて最も携帯電話が売れる時期だ。年末商戦の渦中での警告に市場は敏感に反応。発表を受けてのHTCの株価は6.9%と値幅制限ぎりぎりまで下げた。
相次ぐ特許訴訟での苦戦がHTCの第1の課題
HTCの課題の1つは特許訴訟だ。長引くAppleとの攻防戦で、米国際貿易委員会(ITC)は10月、HTCの訴えに対し、Appleは特許を侵害していないとする初期判定を下した。HTCは7月にAppleの主張を認めたITCにより、特許侵害が認められるとの初期判定を受けている。さらには11月後半、特許訴訟対策として買収予定だったS3 GraphicsとAppleの争いについて、ITCがAppleの主張を認める判決を下した。HTCは約3億ドルを払ってS3 Graphicsを獲得する計画だったが、この買収計画も見直しとなった。
その数日後には、ドイツ企業のIPComが、ドイツにおけるHTCの3G端末の販売差し止め権を行使することを示唆した。IPComは2007年にRobert Boschから取得した無線関連特許を武器にHTCを提訴、2009年に勝訴をおさめていた。今回の差し止めは、HTCが上訴を諦める方針を示したことを受けてのものだ。ドイツは欧州で最も大きな市場であり実現すれば影響は少なからず出るだろう。
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