才能を育てよう、小さな種がやがて大きな実をつけるまで
「花咲くいろは」の経営術【後編】
2011年11月12日 12時00分更新
アニメ「花咲くいろは」を制作した、P.A.WORKS堀川憲司社長へのインタビュー。前編では、スタジオ本社を富山県という“地方”に置いた理由について話を聞いた。
後編では、企業と地方とのつながり、アニメーション産業にどう関わっていくか、そして、これからのアニメーション業界をささえる若者とどう接していきたいかを聞いていく。「職人を育てるのは農業のようなもの」と堀川監督は話す。そこには経営者として、そしてアニメーションを愛する1人の人間としての、熱い意志が込められている。
あらすじ
東京で育った松前緒花は、母・皐月の元を離れ、祖母である四十万スイの経営する“喜翆荘”の仲居として働きながら高校に通うことになった。喜翆荘での新しい生活と仲間は、緒花に様々な感情を気づかせていく。
「花咲くいろは」 公式Webサイト
堀川憲司社長について
1965年生まれ、愛知県出身。富山大学理学部在学中にアニメ業界を志し大学を中退。専門学校を経て竜の子プロダクション、Production I.Gに在籍したのち、1997年真下耕一とともにビィートレインを設立。2000年に富山県東礪波郡城端町(現・南砺市)に越中動画本舗株式会社を設立。2002年に「株式会社ピーエーワークス」に社名を変更。現在、富山本社には演出、作画部門とCG部門があり、東京事務所には演出・デザイン・制作部門が置かれている。代表作は「true tears」「CANAAN」など。
© 花いろ旅館組合
―― 『花咲くいろは』はP.A.WORKS10周年作品として作られたとのことですが、堀川さんのほうでは本作品をどのような方向性にしたいと思いましたか。
堀川 この10年取り組んできたことを反映する作品でもあるので、P.A.WORKSとしての理想も入っているものにしたいなと思いました。僕から方針として話したのは、「若者が仕事でぶつかる壁」がテーマであるということと、主人公の緒花をこんな子にしてほしい、というところですね。
緒花は、仕事ができる人間ではないです。むしろ“できないやつ”でいいと。ただ、好奇心が人一倍あって行動力のある人間で、失敗するとか成功するとか関係なく、とにかくやってみたいというエネルギーだけは持っている。そういう人間が頑張っている姿に心を動かされて、周りのみんなが巻き込まれていく。喜翆荘で働くみんなも、あいつは無鉄砲でおっちょこちょいなやつだけど、あいつが動くなら自分もそれに乗ってやるかと思ってくれるようになって、停滞していた喜翆荘が少しづつ変わっていく。そんな話になればいいなと。
© 花いろ旅館組合
―― 緒花は決して有能なわけではなくて、人を巻き込んでいくエネルギーだけは持っている。そうした主人公に設定したのはなぜでしょうか。
堀川 「現場」で何かを前に転がしはじめるには、人を巻き込む力やエネルギーを持っていることが、すごく求められるんですね。たとえば作品の企画を立てる場合にも、中心に最もエネルギーを持った人間がいて、「よくわからないけど、コイツと作るのは面白そうだから、一緒に仕事をしようかな」と思えることが大事で。
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