Sony Ericssonが10月14日、第3四半期の業績報告書を発表した。フォーキャストは上回ったものの、スマートフォンではSamsungやAppleに水をあけられた状態は変わらずである。そのSony Ericssonを、親会社の1つであるSonyが完全取得するという情報も再燃している。
2011年7~9月期、Sony Ericssonの売上高は前年同期から約1%減少して15億8600万ユーロに留まった。純利益は前年同期が4900万ユーロ、前期(2011年第2四半期)が東日本大震災の影響を受けて5000万ユーロの損失となったのに対し、今期は0ユーロである。
販売台数は950万台、これは前年同期の1040万台からのマイナスで、ASP(平均販売価格)は前年同期の154ユーロから今期は166ユーロに上昇した。これらの数値はおおむね、Reutersの集計したフォーキャストを上回っている。
ASPの増加からもわかるように、「Xperia」ブランドで展開するスマートフォンが売上高に占める比率は80%に達しているという。Sony EricssonのCEO、Bert Nordberg氏は2012年には全ポートフォリオをスマートフォンとし、100%スマートフォンベンダーを目指すとしている。
Sony Ericssonは以前から、ミッドレンジとハイエンド中心で高級のイメージがある。そのため、利益率の低いフィーチャーフォンを捨ててスマートフォンにフォーカスすることは大きな戦略転換ではないし、リソースの集中という点からも理にかなっている。だが、この賭けにはリスクもある。
一度は“Walkman”ケータイなどが好評でトップ3に食い込む勢いを見せたSony Ericssonだが、スマートフォンブームでプレイヤーが入れ替わった現在、ニッチプレイヤーにとどまっている。スマートフォン市場での同社のシェアは、Apple、Samsung、Nokia、Research In Motion、HTC、LGに次いで7位(米Strategy Analytics調べ)。シェアは4.1%にとどまっている。Androidスマートフォンで一気にトップブランドにのし上がったHTCに追い越された格好だ。Androidに限ってみると、台数ベースで12%、金額ベースで11%と自社シェアを推計している。
2009年秋に発表した「Xperia X10」以来、AndroidにフォーカスしてきたSony Ericssonだが、Androidは万能薬ではなかった。同社の弱さの大きな原因はアメリカ市場だろう。アメリカでAndroidはSamsung、HTC、Motorola、LGといった陣営が強く、ヨーロッパと日本・アジアに強いSony Ericssonは存在感が薄い。
この現状を打開しようと、今年の2月に発表したPlayStationケータイ「Xperia PLAY」は明確にアメリカを狙い、初めてシリコンバレーで開発した(2月の発表の席で、同席した元IDCのアナリストはアメリカ市場で売れるだろうと高く評価していた)。Xperia PLAYは5月にVerizon Wirelessより発売されたが、販売台数など実績については明らかになっていない。

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