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「モバイル決済はローカルゲーム」 相互運用性を重視して協力する欧州キャリア

NFCのブームで世界的にモバイル決済普及の機運高まる

2011年06月20日 12時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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モバイル決済の中心となるのは
Googleか、それとも携帯キャリアなのか

 NFCサービスの標準が複数生まれつつあることに対し、BBVAのGurrola氏は「競争は歓迎」とする。だが、Google Wallet発表と同時期にモバイル決済サービスをローンチしたOrangeのGurrola氏は、「勝つのはオペレーターだ」と自信を見せる。

 自信の根拠はGSMの成功だ。当初CDMAなど乱立する通信規格があったが欧州のオペレーターはGSM採用で一致し、共同で世界に広げていった。さらにはCDMA陣営からも移行が進むLTEにより、GSMは完全なグローバルスタンダードとなった。モバイル決済でも同じパターンになる、というのがGurrola氏の予想だ。

 「モバイル決済はローカルゲームだ。グローバルではない」とGurrola氏。欧州のオペレーターは相互運用性を重視しており、Orange、Deutsche Telekom、Telefonica、Vodafone、Telecom Italiaの欧州のトップオペレーター5社はNFCの相互運用性確立に取り組んでいるという。SIMカード、端末、リーダー/ライターなど包括的なもので、オペレーター業界団体GSM Association(GSMA)の支持も得ているという。「小売やサービスプロバイダにしてみれば、バラバラにターゲットとするのではスケールが得られない」とGurrola氏、「相互運用性が鍵を握る」と続けた。

 NFC対応端末が少なく、サービスが少ない問題は「にわとりが先か卵が先かの問題。われわれは自分たちができることを進め、サービスや端末が揃ったときに、ユーザーがすぐに使えるようにする」とGurrola氏は語る。Orangeは2010年12月にNFCへのコミットを発表しており、「端末の50%をNFC対応SIMにする」「ポストペイドユーザーの全員をNFC対応SIMにする」などの準備を進めていると述べた。

 Gurrola氏はまた、「NFC対応が必要なのは端末だけではない。NFC対応SIMカードも必要だ」と述べ、SIMベースのソリューションを重要視している姿勢を見せた。

現実の普及には10年ほどの時間がかかりそう
財布以上にケータイとの付き合いが長い若者から普及する?

 このように楽観論が多く聞かれたが、日本の「おサイフケータイ」の離陸に時間がかかったことを知っている欧州の関係者はすぐに普及すると思っているわけでは決してない。OrangeのGurrola氏は、モバイル決済が主流になるために必要な条件として、「セキュリティ」「使いやすい、シームレスな体験」「サポートと(バウチャーやクーポンなどの)付加価値サービス」の3つを挙げ、今後はこれまでよりも普及のスピードが速くなることは確信しているが、「長い時間が必要。10年はかかるのでは?」と言う。

 デザイン・サービス企業、Fjordのパートナー担当であるChristian Lindholm氏は、財布と感情的な結びつきが少なく、携帯電話との付き合いの方が長い若者から、モバイル決済は普及するとみる。そして、デジタル財布の強みは、個人の情報や好み、レコメンデーションなどをアグリゲートできることにあると強調する。セキュリティとユーザーインターフェイスのバランスとともに、「ソーシャル面のアグリゲーションには大きなチャンスがある」と述べた。


筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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