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「モバイル決済はローカルゲーム」 相互運用性を重視して協力する欧州キャリア

NFCのブームで世界的にモバイル決済普及の機運高まる

2011年06月20日 12時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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 GoogleがAndroid 2.3でNFC(Near Field Communication)をサポート以来のNFCブームにより、世界的にモバイル決済の動きが見られる。6月8日、ロンドンで開催された「Open Mobile Summit」で行なわれたオペレーター、金融機関、小売店の各担当者によるモバイル決済のパネルでは、今年はNFC決済が離陸するのではないかという期待が聞かれた。

期待が広がるNFCを利用したモバイル決済

 FeliCaを用いたモバイル決済については、すでに日本では普及段階にあるが、海外ではそこまでのレベルにはまったく至っていない。しかし、NFCを利用したモバイル決済への関心は世界的に高まりつつある。中でも2012年のロンドンオリンピックを控えたイギリスでは、交通機関や小売店でのNFCモバイル決済への対応がかなり進みそうだ。

左から、EATのRene Batsford氏、OrangeのGurola氏、BBVAのUguina氏、FjordのLindholm氏

 イギリスでは4月から、NFC決済関係のニュースが相次いだ。まず4月、オリンピックの公式スポンサーであるSamsungがVISAと共同で、NFC対応携帯電話によるモバイル決済サービスを提供することを発表した。5月にはオペレータのOrangeが、イギリス初のモバイル決済サービス「Quick Tap」をローンチ。ライバルのO2も年内に開始する見通しを示している。

 OrangeのQuick Tapは、地元の銀行であるBarclayと組んで展開するもので、Barclayの銀行口座またはクレジットカード所有者が対象となる。対応するのはSamsungのNFC対応端末「Tocco Lite」のみ。利用できるのはMcDonald's、EATなどのファストフード、ドラッグストアチェーンのBootsなどで、合計5万店舗。端末も小売店も今後増やしていくとしている。

 だが、イギリスの調査ではモバイル決済やNFCに関する認知度は非常に低い。リサーチ会社のYouGovによると、約70%の消費者がモバイル決済を知らず、NFCについては91%が「知らない」と回答したという。

日本ほどにはモバイル決済の知名度はないが
着実に進化していると語る

 業界では10年ほど前からモバイル決済が語られてきた。世界的に見て最も普及しているのは日本で、欧州ではほどんど進展していないのが現状だ。だが、Orangeのグループ戦略担当Daniel Gurrola氏は、「なかなか起爆しなかったが、実際には進んでいる」と述べ、10年前との違いとして多機能なスマートフォンブームに大きな期待を寄せる。「モバイル決済は製品ではなく、システム。さまざまなパーツが必要だ。今年はソリューションが出てくるだろう」(Gurrola氏)。

 スペインを拠点とする金融機関、BBVAのリモートチャネル&モバイル担当Luis Uguina氏も同意する。「以前からNFCサービスを開発してきたが、ここに来て急ピッチでNFC対応が進みつつある。NFCが利用できるPOSは10万台を越えており、状況が変わった」と述べ、「今年はNFCソリューションが離陸する」と断言した。

 OrangeのQuick Tapにも参加しているイギリスのサンドイッチチェーンのEATは、位置情報を利用して近くにある店舗を知らせるiPhoneアプリを提供するなど、モバイル分野に積極的に取り組んでいる。EATのIT部門トップのRene Batsford氏は、Googleの「Google Wallet」により大きく状況が変わるのではないかと述べる。「小売店として、どのように進展するのか注目している」と続けた。

 Google Walletは自社でモバイル決済サービスを展開したいオペレーターにとっては競合となる可能性がある。Google Walletがスタートするアメリカでは、Verizon Wireless、AT&Tなど大手キャリア3社がNFC決済推進団体のISISを結成している。Google WalletでGoogleと組むSprintはISISに参加しておらず、両者の今後の関係が注目される。

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