昨今、データセンターにおいて注目を集めるのが、ToR(Top of Rack)と呼ばれるポート密度の高いボックス型スイッチである。本稿では、ネットギアが2010年12月に投入した10GbE対応のToRスイッチ「XSM7224S」を触ってみた。
ToRスイッチがなぜ必要になったか?
ToRという用語が登場したのは、いまから2年前だと記憶している。もともとエンタープライズのネットワークはエッジ、ディストリビューション、コアという3階層で構成されることが多く、それぞれ機能や処理能力の異なるスイッチが利用されている。一方で、サーバーやストレージを大量に収容するデータセンターにおいては、信頼性やポート密度の高いシャーシ型のコアスイッチが使われてきたが、近年ではこうした製品がニーズにあわなくなってきた。そこを補うために作られたのが、ToRスイッチというジャンルだと考えてよい。今回紹介するネットギアの「XSM7224S」も、こうしたデータセンターでのサーバーやストレージ集約を前提としたスイッチだ。
ToRスイッチが登場した背景にあるデータセンターのニーズとしては、やはり省スペース、省電力、そしてスケーラビリティが挙げられる。限られたラックスペースのなかで、高いポート密度を実装し、なるべく電力を消費しない。かつシャーシ型スイッチのようにモジュール単位ではなく、筐体単位で信頼性を担保できる。そして仮想化サーバーの利用を前提に、L2でのスイッチングをとにかく高速に行なえる。こうした要件を満たすボックス型スイッチとして生まれたのが、ToRスイッチというジャンルだ。
10GBASE-Tサポート!
UTPケーブルで気軽に10GbE
XSM7224Sは10GbEのSFP+のインターフェイスを24個搭載した1Uのボックス型スイッチ。アップリンクとして10GbEを搭載したスイッチは同社でもいくつか出していたが、メインポートで10GbEをフル実装したのは今回が初めてだという。
インターフェイスの高速化にともない、スイッチング容量は480Gbps、パケット転送能力も357Mppsに高められており、十分な性能を持っている。電源や冷却ファンも冗長化対応で、冷却に関してラックマウントサーバーと同じ前面吸気・背面排気を採用。まさにデータセンターでの利用を前提とした設計が施されている。
XSM7224Sの特徴の1つは、銅線(UTPケーブル)の10GbE規格である10GBASE-Tをサポートしている点だ。前面には24個のSFP+のインターフェイスのほか、4個のRJ-45ポートが用意されている。これが10GBASE-T用のポートで、光ファイバーやSFP+に直接挿せるダイレクトアタッチケーブルを用いることなく、使い慣れたUTPケーブルで10GbEでの伝送を実現する。UTPケーブルであれば、安価で取り回しも楽なので、現場のエンジニアにとってはうれしい。ただし、伝送品質を保つため、利用するUTPケーブルはCAT6以上が必要。また、10GBASE-T用の4ポートはSFP+4個と排他利用になっている。
もう1つの特徴は、最大4台までのXSM7224Sをスタックして、1台のスイッチとして利用することが可能な点だ。しかも特別なスタックケーブルではなく、10GbEをそのままスタック用のリンクとして使う。通常のダイレクトアタッチケーブルやUTPケーブルが使えるわけだ。筐体間を二重リングの構成を組めば、計80Gbpsの帯域で筐体が接続されることになる。
さらにソフトウェアのアップデートにより、L3スイッチとしても利用できるのもメリット。動的ルーティング(RIP/OSPF)やマルチキャストルーティングのほか、ACL(Access Control List)やQoS(Quality of Service)などもサポート。もちろん、IPv4だけではなく、IPv6でも利用できる。L3スイッチであれば、中規模ネットワークのコアスイッチとしてアクセススイッチを束ねる役割も担える。
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