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Googleのアプリストア「Chrome Web Store」で見えたもの

2011年02月14日 21時00分更新

文● 海上忍

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 Googleがオープンしたオンラインアプリケーションストア「Chrome Web Store」は、Google ChromeとChrome OSを推進するGoogleにとって、今後重要な役割を果たすと考えられるサービスだ。ここでは、Chrome Web Storeが開設された背景と、実際に利用した感想をレビューしたい。

Googleが開設したウェブアプリのオンラインストア「Chrome Web Store」

「Chrome Web Store」オープンの背景

 Chrome Web Storeのローンチは、2010年12月にサンフランシスコで開催されたGoogleのイベントで発表された。イベントは、Adaptive Compiling(アダプティブ コンパイリング)技術により高速化されたJavaScriptエンジン「Crankshaft」を採用したウェブブラウザー「Google Chrome 10」と、搭載ノート機のデモが実施された「Chrome OS」の2つを中心に進められたが、Googleの先々の関心がオンラインアプリケーションストアであるChrome Web Storeにあることは間違いない。

 というのも、Googleはかねてから「アプリはネイティブコードからWebアプリへとシフトしていく」という立場を明確にしており、Chrome Web Storeもその延長線上にあるからだ。Webアプリへのシフトについては、パフォーマンスなどから判断して時期尚早という意見も多く、この分野で先行するAppleも現状ネイティブコードのアプリ一本槍だが、Googleはあえて違う道を選択した。

 その裏付けとなる技術のひとつが「Native Client」だ。一言でいえば、ネイティブコードをウェブブラウザー上で安全に実行するためのプラットフォームであり、パフォーマンスを落とすことなくウェブブラウザー上でアプリケーションを実行できる。当初はx86版のみリリースされていたが、のちにx86-64(64bit版)とARM版も追加、ネットブックやスマートフォンをもターゲットにした技術であることが再確認された。

Native Clientで実行されるライフゲームのデモ。将来的には、Native Clientベースのウェブアプリが増加するはず

 もうひとつが、Google Chromeのユーザー数の順調な伸びだ。2010年5月に実施されたイベント「Google I/O」の時点では7000万人に過ぎなかったアクティブユーザー数は、12月までに1億2000万人へと急増。今後Android OSベースのスマートフォンや、Google TVの出荷台数が伸びれば、その数はさらに増える。

 当面はHTML5ベースのウェブアプリが中心になるものと予想されるが、前述した2つの点で技術の方向性と市場の拡大が担保されたと考えると、この時期にアプリストアをローンチすることも納得できる。さすがにGoogleが、PCのウェブブラウザー上でのみ遊べるカジュアルゲームでひと儲けしたがっているとは考えにくい。

Google Web Storeを使ってみた

 2月14日現在のChrome Web Storeは、英語版のみ。日本からもアクセス可能で、決済サービスの「Google Check Out」は問題なく利用できるので、利用自体に支障はない。

 Chrome Web Storeは、Webアプリの「Apps」と拡張機能の「Extensions」、外観定義ファイルを集めた「Themes」の3カテゴリで構成される。それぞれ階層構造を持ち、Apps以下には「Communication」や「Education」、Extensions以下には「Blogging」や「Fun」がある、といった具合だ。

 トップページ右端には「Top Paid」のコーナーがあり、有償アプリがピックアップされている。その多くはエンターテインメント系で、価格帯は1.99ドル~2.99ドル(約165円〜250円程度)といったところ。

 有償版の購入者は決して多いとはいえず、最多の「SparkChess」が4万2892ユーザー。第2位は「LucidChart - Collaborative Diagramming」で、2万8600ユーザー、第3位は「MOG Music」の2万1215ユーザー(いずれも2月14日現在)。4位以下は推して知るべしで、無償公開されているゲーム「Entanglement」や「Poppit」(どちらも100万ユーザー以上)、Twitterクライアント「TweetDeck」(29万2409ユーザー)などと比べるべくもない。利益ベースでの成功は、当分先だろう。

同じ色の風船を割ってプレゼントをGETしていくゲームタイトル「Poppit」。Google Web Toolkitを使いHTML5に移植されたという

 ウェブアプリのダウンロードには、Googleアカウントが必要。アイコンをクリックすると、アプリまたは機能拡張の説明ページが表示され、数点のスクリーンショットとともにインストールボタンが現われる。ダウンロードされたアプリは、新規タブの「アプリケーション」欄にアイコンとして表示されるので、それをクリックして起動……という流れだ。

アプリのアイコンをクリックすると、このような解説画面が現われる

 サービス全体を通した感想だが、スタートから約3ヵ月ということもあり、「タマ不足」の感は否めない。ゲームにしても、カジュアルゲームと一括りにされかねないタイトルが目立ち、正直食指が動かない。

 一方、デザインやウェブブラウザーとの一体感などサイトとしての完成度は高く、決済までの流れもスムーズで、決済には実績あるGoogle Checkout使うという安心感もある。ありきたりな結論だが、さらなるコンテンツ充実を望むというところだろうか。

インストール済みのアプリは、新規タブに一覧表示される

起動方法やアンインストールなどの処理も、タブ上から操作する


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