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MEDIVERSEプレ座談会

Facebookと電子出版のこれからを考えてみましょうよ!

2011年01月26日 09時00分更新

文● 中西祥智/アスキー総合研究所

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電子「出版」という広い話ではなくもっと絞った議論を

遠藤 出版とは何かというような話なんですけれど、一応、自分で取り組んできた立場から言わせてもらうと、音楽雑誌だったら、好きなミュージシャンのことが書いてあれば売れるわけです。自動車雑誌は、元『ホリデーオート』の知り合いによれば、スカイラインのことが書いてあれば売れる時代があったそうです。ゴルフ雑誌では、読んでいて自分も上達したような気分になれるかどうかが問われるでしょう。そして、それぞれのジャンルで、「生き生き」とやれているかどうかが勝負になります。

 つまり、雑誌にしろ書籍にしろ、ジャンルによって少しずつスタイルは違うんです。だから、全体の形だけの電子「出版」の話をしていてもダメなんだと思います。

 そして、電子出版が面白いかどうかは、従来のメディアが持っていた「生き生き」感を、電子の時代にどう伝えるかにかかっています。なにを書きたいか、伝えたいかというのがないメディアは成り立たない。

竹田 そうですね。「電子出版」という言葉を使った途端に妙に広すぎるんですよね。なんのために出版をやっていたか、少し戻る必要があります。

遠藤 せめて「電子女性雑誌」くらいの具体性のあるところで議論しないと、全体を語るタイミングはもう過ぎているんじゃないですかね。たとえば、雑誌にフロッピーディスクの付録を付けたのは、1989年にわたしが担当で初めてやったんですけど、目的は明確で「コレですぐにソフトに触ってみてくれ」という感じです。フロッピーを付けることに意味があるのではなくて、すぐにソフトに触れることに意味がある。電子出版も、それと同じじゃないでしょうか。

竹田 それじゃ、いまの環境の中ならどういうメディアを作ったらいいのかということですね。

遠藤 ある意味、いまはとてもチャンスなんです。ネットビジネスの成功者は、Amazonしかり、Appleしかり、過去の文化の延長線上にいるわけです。Amazonだったら、600年という本の歴史の上に乗っかっている。iTunesの場合は、100年くらいの録音媒体の歴史の上ですね。そういうものが、ネットの時代に大きく変化していくだろうということを読み切っている。しかも、それらが持っている価値のほうは普遍です。

 そういった過去のシステムが崩れるところに、チャンスがあります。

竹田 そういう意味では、たとえばクックパッドは、レシピという不動の価値のあるものから入ったという点で分かりやすい。

増井 でも、みんな最初から完璧な戦略を考えていたんですかね? Amazonも、最初はとりあえず本屋でいいやと思っただけかもしれません。その後いろいろ売ってみたけれど、遠い将来は電子出版が有望だとわかってきたので、途中段階としていまKindleを売ってるのかもしれません。

 食品なら行けると思って商売を始めた人たちが、全部失敗しちゃって、結果Amazonが生き残っただけなのかもしれない。Amazonが、ちゃんと分析していたというのは後付けかもしれませんよ。

遠藤 まあ、「やってたら未来が見えてきた」式は正しいんですよ。

 本をネタにしているという点で、電子出版というものには絶大な魅力があります。だからこそ、Amazonは当たり前として、Apple、Googleといった、世界のネット企業のいちばんいいところがこぞってやろうとしているんじゃないですか。マードックや、デジタルから一時期ちょっと引いていたヴァージンまでやると言っている。単に本を売る以上の価値があるんです。

成功事例の背後にある普遍的な原理を

増井 何が流行るかを完全に見極めることは不可能だけれど、フットワークを軽くしておいて、素早く対応することとかも重要になっていますからね。GREEがさっとゲームに行ったというのは象徴的ですけれど。普遍の原理の上だから、かなり大胆なこともできる。

遠藤 それと対比して、mixiが可哀想だという感じの話もあるけれど、わたしは1カ所で頑張るというやり方もあると思っています。悪口を言うのは簡単ですから。

竹田 それは、悪口を言うほうがカッコいいからでしょう。

遠藤 「ウケル文書の法則」ってのがあるんですよ。あんまり言いたくないんだけれど、編集者時代に、筆者にこうやってくれとやっていた法則の1つが、「国内のものはすべて徹底的に叩く。アメリカのものは素晴らしい」。これが、メチャメチャ読まれるコツなんです。

 で、その構図をいろいろ調べていったら、ジャズ評論が、日本では歴史的にこの構図の原型を作り出しているというところにたどり着きました。コツがあって、「日本はすべてダメだけど、本当に1つか2つだけ、これだけはいい」というのを入れる。日本のジャズは子供だましだが、幻のモカンボ・セッションだけはあの日はサイコーだった……とかね。

竹田 そういうコンテンツの理論はあるね。

遠藤 いまのFacebookに関する論調は、ちょっとそういうところがある。mixiが、原信夫とシャープス&フラッツで、Facebookはマイルス・デイヴィスであるという。まあ、正直そうだったりするのかもしれませんし、それを勉強することは大切なんだけれど、重要なのはFacbookを技術論で見ないことだと思います。

竹田 Facbook上昇、mixi下降という話って簡単ですからね。Twitterが、あと何年でダメになるって言えば、「おーっ」となるみたいなところがある。

遠藤 Facebookは、自分で日本で触っていても分からないので、知り合いのアメリカ人にどうやって使っているのかデモしてもらったことがあるんですね。そうしたら、アメリカ人は大人になっても誕生パーティとかホームパーティとかを頻繁にやるじゃないですか。それの告知から、日程調整から、楽しんだあとの写真の共有から、要するにライフスタイルにバッチリはまっている。

 もちろん、これはごく一部の使い方なんだけれど、こういうベタなところから捉えているところが成功の秘密だと思うんです。電子出版に必要なのも、こういう感覚だと思うのですよ。

竹田 MEDIVERSEでやるセミナーは、うまくいった事例だけれどものすごく特殊で、ほかに転用できない話にはならないように組み立てたいと思っています。メディアのプロという人たちに来てもらって、さっき色々出た話じゃないけれど、普遍的な原理があるわけですから。MEDIVERSEでそのような情報環境を提供していきます、ということで。


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