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古田雄介の“顔の見えるインターネット”第86回

まるで不動産版ウィキリークス!「大島てる」の正体は?

2010年12月21日 12時00分更新

文● 古田雄介

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事故物件を調べていくうちに
「もう大家稼業はやめようかなー」という心理に

―― 大島てるの実態については分かりました。では事故物件サイトを始めた理由を教えてください。

大島学 もともとは新規に物件を取得する際の参考に事故物件の情報を収集していたのが始まりです。図書館で古い新聞を読んで、どこで事件があったのかを調べていただけだったんですね。

 ですが、過去の情報はあまりに膨大で、とてもじゃないですが我々だけで調べきることはできない。昭和何年に東京の某所で殺人事件があったと分かったとしても、同時期に発生した同レベルの事故物件を網羅できるわけはなく、役立たずなデータベースにしかならないと。それに気づいて、「昔のことを調べるのではなく、日々起こっていることを蓄積していこう」と方向転換したのが、2005年9月です。

 ただ、日々起こっていることにしても、やはり全部を追い切るのは骨が折れます。そこで、不特定多数の方から情報を提供してもらうことを期待して、一般公開するためにサイトを立ち上げたんです。


―― こっちが知っている事故物件は教えるから、皆の知っている情報も教えてよ、というわけですね。では事故物件に関する情報を募集する「広聴」ページが「大島てる」の一番重要なところだと。

大島学 そうなんですよ。やはり、情報というのは出せば出すほど集まってくるので、我々も社内の私的利用に限るというのはやめました。公判の傍聴や周辺地域の聞き込みなどで裏が取れた物件はどんどん公開していくスタンスにしたんです。

 そうすることで、閲覧者から「あそこが載っていないじゃないか」や「あの部屋番号は間違ってるよ」といった反応が得られるのではないかと期待しました。実際、玉石混淆ではありますけれども、現在は毎日3~4通のメールをいただけるようになっています。

広聴ページ。2009年秋頃にアクセス数が上がり、以降は閲覧者からのメールが現在の水準まで好調に上がっていったという。2010年12月現在、裏取り待ちの物件は「掲載済み件数(約1200件)と同じくらいになっています」とのことだ

―― 「集合知化」ですね。そうして充実した情報を本業にも活用される。

大島学 いえ、それが、当初からずいぶん変わってしまいまして。もう自分たちの本業で利用するという気が起きなくなっているんですよ。そもそも、不動産を買いたくなくなっちゃっているんです。

 サイトを運営してもう5年になりますけど、毎日のように事故物件を見に行ったり調べたりしていると、大家という職業がすごくリスキーに感じるようになるんです。確率的に事故物件に当たるのは本当にまれなんでしょうけど、日々そのまれな物件を目の当たりにしているわけですから。最近は本当に躊躇してしまって、「大家稼業はやめようかなー」と思っています(笑)。

―― (笑) お気持ちはなんとなく分かります……が、それではどうして続けているんですか? 人件費もかかっているでしょうし。

大島学 一言で言うと、「今さらやめられない」ということに尽きます。惰性です。

 現在手にしている情報だけではまだ漏れが多く、うかうかしていると「せっかく教えてあげたのに、載せてくれない……」と思われてしまいます。それに、現在手にしている情報だけではまだ漏れが多く、更新を続けないと役立たずのデータベースとなってしまうでしょう。それでは、今まで続けてやってきた意味がまったくなくなってしまいますしね。

大島てるのFacebookページ。「提供して下さった情報はちゃんと参考にしていますよ、というアピールをかねて、Facebookではまだ裏取りが完了していない物件の情報を断りを入れたうえで掲載しています」という

(次のページに続く)

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