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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第86回

まるで不動産版ウィキリークス!「大島てる」の正体は?

2010年12月21日 12時00分更新

文● 古田雄介

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「大島てる」の会社概要はジョークにあらず!

―― まずは「大島てる」の実態について教えてください。大島学さん一人で運営しているんですか?

大島学 いえ、株式会社として、集団で運営しています。私は「広報官」です。まあ、広報だけでなく、今日もこの後に横浜地裁で殺人事件等の公判開廷予定表を閲覧するんですが、そうした調査作業も他のメンバーと手分けしてやっているんですよ。

 大島てるは、ITの専門家たちと、私のような町中を駈けずり回る人たちとで運営しています。常勤者は数名で、常設の事務所もありません。多数の協力者とボランティアによって支えられています。また、私以外は表に出ないようにしています。メンバーが持っている名刺も私の名前のものです。

―― なるほど。では会社概要ですが、設立が1837年で、陸軍病院が取引先という……。

大島学 これも本当です。「株式会社大島てる」の源流は、大島ぬい(人名)が天保年間に始めた事業にさかのぼります。当時は「会社」の制度がありませんから、「会社設立」ではなく「創業」としています。創業当初は不動産とは余り関わりがありませんでした。その後、不動産賃貸・管理業に進出したのは大島てる(人名)の代になってからです。現在の社名は、この中興の祖の名前から取りました。私は大島てるの孫にあたるわけです。

大島学氏。横浜地裁の向かいにあるカフェで取材に応じてくれた。海事代理士の資格を持っており、不動産のほかに、創業者の名前をとった「大島ぬい事務所」で船の売買もしているという。「仕事時間の半分以上は事故物件の調査に充てている」とのこと

―― 大島てるでは副業として、事故物件とステ看板、落選運動等をされているわけですね? 事故物件以外の具体的な取り組みを教えてください。

大島学 はい。まあ、副業といっても、収入は望めない、いわば道楽のような活動ではありますが。

 「ステ看板」というのはステ看板を除去して街の美観を保つという、ボランティア活動です。不動産関係の違法看板を除去して回っています。「落選運動」は、選挙に立候補して落選を繰り返しているわけでなく、出馬した候補者について、第三者の立場から客観的な評価を下したり、そのために必要な調査をするという活動です。

―― うーん……。確かに収益という面からはかなり遠い活動のように感じます。

大島学 事故物件についても、「落選活動」と同じなんですよ。よく、サイトをご覧になった方から、「(事故物件だったら)安く借りられるんですか?」と聞かれるんですが、我々は物件の紹介は一切していないんですね。事故物件情報は持っていても、事故物件自体を商品として扱わない。それは利益相反の問題を回避するためなんです。

 事故物件の情報を収集しても、我々自身が仲介業者だったら、客付けのためにそれらの情報を隠蔽する誘惑に駆られても不思議ではありません。

 閲覧者側からもそう見られる可能性を否定できません。そういう問題と無縁になるように、あくまで第三者の立場から客観的な調査をして、事故物件か否かを評価しないと、何の役にも立たないサイトになってしまいます。だから、サイト「大島てる」は、あくまで事故物件の調査のみを徹底して行なうというコンセプトで運営しているんですよ。

「大島てる」の会社概要。もうひとつの関連会社「大島かめきち」は、学氏の祖父の名前を用いた社名で、「ベンチャー企業というわけじゃないんだよという気持ちがあって、せっかくだから記載しておきました」という

(次のページに続く)

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