マイクロソフトと組んでおきたい理由は3つ考えられる
このようなメーカーの動向を見たとき、Symbianへの風当たりが一段と厳しくなってきたと感じる。ここ数週間で、SamsungとSony EricssonがSymbian戦略の見直しを発表、SamsungはSymbianサポートを打ち切ることを発表、Sony EricssonはSymbian搭載機の開発予定は現在無しとしている。この2社はAndroidをフラッグシップ端末で採用するという動きで共通している。
SymbianではなくWindows Phone 7を選ぶという決断は、Symbianにとって痛いはずだ。Symbianは引き続き、携帯電話最大手のNokiaの支持を受けているとはいえ、シェア2位のSamsungはNokiaとの差をじりじりと詰めている。またSymbianの課題であった北米市場で、SamsungとSony Ericssonは重要なプレイヤーだった事情も無視できない(Nokiaは北米市場ではほとんど存在感をなくしてしまっており、これまでSymbianに北米市場戦略を聞くとSamsungの名前が挙がっていた)。
Symbianはオープンソースとなったことで長年のライバルであるMicrosoftに対し、ライセンス料金の点でOEMメーカーに対し好条件を出せたはずだ。だがWindows Phone 7がいざフタを開けると、高いライセンス料にもかかわらず、Microsoftは自分たちよりも多くのメーカーの支持を取り付けたことになった。
OSの技術や機能そのものを除くと、OEMがWindows Phone 7を採用する理由としては、このところの特許訴訟問題、NokiaとSymbianの関係、アメリカ市場の3つが挙げられるだろう。
MicrosoftはAndroid戦略を積極展開しているMotorolaを提訴、一方で特許管理会社のAcaciaとは、スマートフォンが関連する74件の特許ライセンス契約を結んだと発表した。メーカーにとって、このような特許訴訟というプレッシャーは軽視できないようで、Windows Phone 7を採用することでMicrosoftと結んでおこうという狙いもありそうだ。
2つ目のNokiaとSymbianについては、Symbian Foudationは独立した中立的組織ではあるが、Symbianの技術の90%以上がNokiaからと言われている。競合を考えると別のOSを選択するという決断は自然ともいえるだろう。Microsoftは早々に撤退した「KIN」でも自社ブランド端末という位置づけを避け、OEMとの関係維持に努めてきたのだ。
3つ目のアメリカ市場。ここ2~3年のスマートフォンブームで、アメリカはメーカーにとって重要度が高い市場となっている。Windows Mobileはこれまでもアメリカ市場では健闘しており、メーカーがこの市場を強化するにあたって、知名度が低いSymbianよりもWindows Phone 7の方が安全ルートと判断したとしてもおかしくない。
このように、モバイルOSの戦いにおいて、Windows Phone 7の登場は直接的/間接的にさまざまな影響を与えるだろうが、Symbianへのインパクトは思いのほか大きいように見える。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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