完走はわずか1チーム。予想外に厳しかった300m
14チーム中、往復できたのがわずか1チームというのは厳しい結果と言えるかもしれない。
大会の審査にあたった技術評価委員会を務める各大学の教授は、「150mと300mの間には、バッテリーひとつとっても単なる距離でない壁があった。この先、300→600→1200mと伸ばしていったら、また大きな壁があるのか、それとも技術もそれに比例していくのだろうか。クライマーの構造は、シンプルなのが一番いいのかもしれない」(神奈川大学 江上教授)。
「プロポの限界を感じる。スペックでは5~600mとなっているが、それは水平方向でのことであり、建物などでの反射も込みでの数字となっている。JSETEC競技会場のように何もない開けたところでは、減衰してしまってスペック通りにいかないはず。300mを越えたら自律制御の方向へ舵を切るべき」(日本大学 波多野准教授)とコメントしている。
宇宙エレベーター実現に向けてとはいえ、まだまだ目標のはるか手前で試行錯誤している様子は歯がゆいと映るかもしれない。しかし、試行錯誤の結果うまくいかない経験でさえ、今確実に持っているのは、日本では本大会に挑戦した参加者のみなのだ。
JSEA副会長・技術評価委員である日本大学 青木教授が「3日間、どれほど疲れてもチャレンジ、カイゼンを試みた参加者。3日間やり通したこと自体『耐久賞』に値する」と評価したように、宇宙エレベーターという、うまくいっても40年先かもしれないゴールに到達できるのは、この耐久力を持った人々かもしれないのだ。
大会表彰式にて、ミュンヘン工科大学チームが、来年以降ヨーロッパでの宇宙エレベーター競技会開催に向けて動き出すことを発表した。国内参加チームには海外競技会を制することも視野に入れ、挑戦を続けてほしいものだ。