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ついに動き出した!

宇宙エレベーター技術競技会を見てきた【動画アリ】

2009年09月12日 12時00分更新

文● 秋山文野

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宇宙エレベーター技術競技会開催!

 「宇宙エレベーター(以下、SE)」に対する関心、期待が高まってきている。静止軌道上のステーションと地表とをケーブルで結び、昇降機で安定的に行き来するという構想がSFの世界だけでなく、実現のロードマップまで備えた具体案、ということが静かに浸透しつつある。

クライマー取り付け(インストール)が終了し上昇をスタートする初日のチーム奥澤 momonga

 5月の記事でも紹介した(関連記事)、日本でSE実現に向けて具体的に動こう、という初の競技会「第1回 宇宙エレベーター技術競技会」(JSETEC)が8月8日、9日の2日間、千葉県船橋市の日本大学校地にて開催された。アメリカでは2005年から先行して、NASAの賞金供与により、米スペースワード財団が開催する「Tether Strength (高強度繊維)」と「Power Beaming(エネルギー伝送) 」コンペティションが行なわれている。

 Power Beamingコンテスト出場経験を持つ日本宇宙エレベーター協会(JSEA)の大野会長によれば、

Power Beamingコンテストは、どちらかというと大出力レーザーの技術向上を目指すもので、クライマーはバッテリーなしで駆動する条件が課せられています。エネルギー送受信部以外の部分のメカニズム、制御はあまり考慮されていない。ならば、国際的な役割分担として、日本がすでに高い技術を持つエレベーター技術にフォーカスして、まずは空中のケーブルを安全かつ高速に昇降するという機構の制御を実現させてはどうかと思いました

 副会長で日本大学理工学部の青木教授によれば、ビルの壁面などに吊したケーブルを自動的に昇降する機構、というようなものでも、今まで実現したものはないのだという。そして「どうせやるなら、あちこちでばらばらに研究を行なうより、みんなで競技会という『お祭り』もしたいでしょ?」(大野会長)という動機もひそかに隠れていた。

グラウンド(野球場)の中央から、150mの高さまで、約60kgの浮力を持つバルーンがテザーを釣り上げる

 競技は2日間、1チーム45分の持ち時間内に、バルーンでつるされた「テザー」を地上から150mの高さまで「クライマー」が昇降するスピードを競う。テザーは厚さ1.5mm、幅50mmのベルトで、車のシートベルトをそのまま使用したものだ。クライマー重量は最大10kg、直流12Vバッテリー駆動という条件が課されている。

 競技のメイン課題は上昇の速さを競うものだが、安全に降りてくるという条件もクリアしなくてはならない。また、各種センサーやカメラなどの機器類を取り付けて昇降すると、それも評価される。ペイロード搭載のデータになるからだ。

 参加したのは、日本大学理工学部青木研究室チーム、羽田野研究室チーム、神奈川大学工学部KSC-1チーム、KSC-2チーム、名古屋大学工学部、静岡大学工学部、ミュンヘン工科大学、チーム奥澤の8チーム。基本的にはモーターと摩擦車を使ったクライマーをそれぞれ開発して参加した。

名古屋大学チームのクライマー。中央がぽっかり空いているのは、メインローラー周辺の調整を行なうためだが、残念ながら競技復帰はならなかった

(次ページへ続く)

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