KDDIが、いよいよAndroid搭載携帯電話端末を発売した。そのひとつがシャープ製の「IS01」だ(関連記事)。
IS01はAndroidというところだけでなく、さまざまなところに「新しいトライアル」が見える端末でもある。だが、いわゆるトレンドのスレート端末ではないため、「拍子抜けした」「期待したものと違う」という言葉も聞こえてくる。シャープはなにを狙ってこの端末を作ったのだろうか? IS01の見所はどこになるのだろうか?
シャープにてIS01の商品企画を担当した、通信システム事業本部パーソナル通信第三事業部 商品企画部主事の本田雅則氏に話を聞いた。話は端末そのもののコンセプトから、「日本メーカーがAndroidを使うには」といった点まで、さまざまな話題に広がっていった。
すべては「キーボード」から始まった
IS01はどのような形で企画されたのか? 本田氏は「Androidを使った携帯電話を、といった話からスタートしたものではない」と話す。
本田「元々我々が考えていたのは、『まったく新しい通信端末をゼロベースから企画する』ということだったんです。具体的な時期は申し上げられませんが、ソーシャルな機能に特化した端末を作ろう、と考えはじめました」
「一般的に携帯電話の商品企画は、ディスプレーのサイズを決めるところから始まります。そして、キーボードがどうだとか、どのくらいの機能を入れるのかといったことが、サイズ感から決まっていく。ですが、この端末についてはそういう作り方をしませんでした。一度『そういうコンセプトははずしてしまおう』と考えたのです」
「そこで注目したのがウェブコミュニケーション。特に注目したのは、mixiがIR資料として公開していた『モバイルでの利用率』なんです。当時、携帯電話からの利用が8割を超えていました。モバイルでのウェブコミュニケーションが、ものすごく発達し始めていたわけです」
「実際グループインタビューをしても、若い女性が『最近メールを使わなくなった』と言うんです。例えばディズニーランドに遊びに行くとき、『誰か行かない?』とmixiに書く。すると行きたい人が集まって、みんなで行く。もちろんメールも使ってはいるのですが、それよりもmixiやブログなどのウェブコミュニケーションを多く使っているという現状が見えてきました」
「そのうえで、面白い例があるんです。ある人は、おいしい食べ物を見つけたらすぐにケータイで写真を撮影し、ブログに掲載していた。でも、ケータイから投稿するのは写真だけ。本文は『自宅に帰ってからパソコンで書く』と言うんです。やっぱりモバイル(携帯電話)での入力はちょっと大変だから、ということのようです」
「『それなら、文字入力を極めていこう』と考えたのが、この端末を企画した理由のひとつです。ですから今回の端末では、『キーのサイズ』から決めて、それに従い技術条件を定めていった、というのが実情です」
結論としては「キーボード重視」という単純なものである。しかし、それが「携帯で十分」という単純な語り口とは違う、いまのモバイル機器のあり方を示しているといえる。「文字入力を極めていこう」という言葉どおり、IS01のタイプ感は見た目とは裏腹に(?)素晴らしくいい。フラットな見ためのキーボードであるが、しっかりしたタイプ感と違和感の少ないレイアウトが共存している。
本田「このキーボードは、横幅が127mmになっています。持って使うにも置いて使うにも絶妙なバランスが必要だったので、たくさんのモデルを作って検討しました。127mmより大きいと両手持ちの場合、女性の方では[G]や[F]キーに手が届かなくなる。逆にこれより小さくすると、置いて打つ時にタイプが難しくなる。今でも中指くらいまでを使ってのタイプですね。修行すると薬指くらいまで使えるようになるんですが(笑)」
「技術要件の中でも大きかったのは、『薄さ』なんです。パソコンでは台形キーが採用されていますが、これを使うとどうしても厚くなる。デザイン上の検討もあり、今回のようなフラットなキーにしました」
「しかし、127mmの中にこの薄さで入るパンタグラフキーというのは、本当に大変なんです。部品メーカーの方にもご協力いただき、なんとか限界のサイズに挑戦しました。こういう機器ではややもすると、ゴムラバーの接点を使ったキーになるのですが、タイプ時にキーが水平に下りないので操作感が悪い。どうしてもパンタグラフキーにこだわりたかったんです。結果的に127mmというのは、こういった点にこだわるとギリギリのサイズ、ということになりました」
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