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4年で売上げ5倍!街のカーテン屋さんのPDCAとは?

2010年07月02日 15時02分更新

文●津田昌宏/株式会社くれない代表取締役

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この記事は、一般社団法人イーコマース事業協会による「ネットショップ成功事例」の連載の2回目です。イーコマース事業協会は、おもに関西のネットショップオーナーが集まる「互助会」で、189店舗(2009年末現在)が加盟しています。今回の著者は、カーテン販売の「くれないダイレクト」を運営する株式会社くれない代表取締役の津田昌宏さんです。


くれないダイレクト

くれないが運営する「くれないダイレクト」

 大阪府高槻市は、大阪市と京都市の中間に位置するベッドダウンだ。大阪市と京都市の市章を組み合わせ、高槻の「高」を形どった市章は、両都とともに発展する高槻市の姿を象徴しているという。衆議院の選挙区は大阪10区で、社民党の辻本清美氏の地元、というと全国的にイメージしやすいだろうか。

 くれないダイレクトを運営する株式会社くれない代表取締役の津田昌宏さんは、「高槻市の駅前で細々とインテリアショップを営んで参りましたが、ネット通販を開始した2000年5月の時点で、駅前商店街の衰退がすでに始まっておりました」という。街のカーテン屋さんが始めたネットショップは、どのように成功を収めたのだろうか。


お客様像がハッキリするまでに7年かかった!

 2000年にネットショップを始める以前から「このまま推移しても将来性がない」というボンヤリとした危機感はありました。高槻市を商圏として商売するよりも、もっと広域に、もっと分母を大きくしなければならない、と考えたのです。そこで2000年5月に開始したのが、開業資金が少なくて済むネット通販です。

 しかし、当時は何のノウハウもありません。月商100万円にたどり着くまでに4年近くかかり、イーコマース事業協会の前身である西日本名店街に入会し、いろいろな方との交流やノウハウの蓄積によって月商が1000万円程度になったものの、利益度外視の低価格戦略のため、まったく儲からず、疲れ果てる毎日が続きました。

 2005年末頃でしょうか。それまでは価格が安くなければ売れないと思っていたのですが、価格に見合う価値をお客さんに感じてもらえれば、喜んで買ってもらえることに気づいたのです。そこで、マーケティングの手法を採り入れて、ターゲットを明確にすること、十分な粗利益率を取ることの2点について、いちから考え直すことにしました。

 ターゲットを明確にするには、そもそもネット通販における「カーテン」という商品の特性は何なのか考える必要があります。私が考えたカーテンの特性は、以下の通りです。

  • 購入者の性別:大半が女性で、男性は少ない
  • 購入時期:引っ越しなど、移動時が多い
  • 価格帯:5000円~1万円の、店頭市場では存在しない価格帯の商品がある
  • リピート周期:10~15年と長く、ネット通販としては長すぎる

 こうして通販カーテンの特性を考えてみると、3年以内に引っ越しがありそうで、5000円~1万円の価格帯のカーテンを購入する女性、さらに当時メインだった楽天市場の最多顧客層も30代女性であったことから、「女性、30歳、独身、OL、都市部に一人住まい」という具体的なお客様像を描きました。「30歳」としたのは、「30代」よりお客様の顔がハッキリ思い浮かぶからです。


お客様像がハッキリして会社の改革が進んだ

 ターゲットとなるお客様像がハッキリしてくると、今まで仕入れていた商材がお客様に合っていない場合があることにも気がつきました。メーカーにはメーカーの顧客像があって製品ができているのでしょうが、それは自社の顧客像と重なるわけではない。考えてみれば当たり前のことなのですが、お客様像を自分たちで描くことで気づけたのです。

 そこで、オリジナル商品を製作して販売することにしました。オリジナル商品に切り替えることで、粗利益率も高くできます。粗利益率は、単に販売価格を上げるだけでも高くできますが、それでは品質を落とすのと同じです。オリジナル商品を製作することで、販売価格を上げずに利益率を高くすることにしたわけです。

 お客様像がハッキリしてくると、Webサイト全体や個々のページのデザインにも方針が見えてきます。特にキャッチコピーは、ターゲットにどうした訴求できるのか、きちんと考えられるようになりました。また、こうしてお客様を意識しながらさまざまな施策を打っていったところ、業界初の製品をたくさん企画、販売できました。さらに、オーダーカーテン即日出荷サービス、一年補償サービス、サイズ補償サービス、「経営革新計画承認企業」となったカーテンリサイクルサービス、メルマガヘコムモン(4コママンガ)、お客様に替わって寄付するワクチン寄付サービスなど、商品以外のサービス面でも改革が進んだのです。

 こうした改革により、2009年の売上げは2005年に対して5倍以上、粗利益率は2倍以上になり、スタッフも2005年当時の3名から2010年4月に新卒2名を加えて総勢13名になりました。さらに社会貢献やエコ活動も積極的にできるようになったのです。

 ネットショップを始めてからの10年間を振り返ると、実店舗だけではこれだけの改革は難しかったと思います。ネットショップはデータを集めやすく、PDCAのサイクルを早く、たくさん回せるのが最大の武器です。ネットショップに関わっている方には、ネットショップという業態の強みを活かして欲しい。そう願っています。


著者プロフィール


津田昌宏

1978年 関西学院大学 商学部卒業
一般社団法人 イーコマース事業協会 理事長(2008~2010年3月)
高槻商工会議所 雑貨品 部会副部会長
2007年 経営革新計画企業と承認される
2008年 ベストECショップ大賞2008 社会貢献賞 (財)J-FEC社 会貢献賞受賞 (財)地球環境財団
2009年 エコアクション21 登録・認証番号0003227
2010年 関西IT百選 優秀賞受賞 関西サイエンスフィーラム
エビス 大賞 日流e-コマース新聞社賞受賞
CO2排出量削減コンペ 準エコ大賞受賞 高槻環境市民会議

株式会社くれない
〒569-0802 大阪府高槻市北園町14-3
連絡先 072-684-0787
電子メール kurenai[アットマーク]movie.ocn.ne.jp

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