質疑応答
ときどき「山ごもり」をして考える
── ゲーム業界からiPhone業界に入った際、一番違いを感じられたのは何ですか? また、一番、戸惑われたことは?
南雲 20代の自分、ゲームメーカーに入った頃の自分を思い出しました(笑)。今、家庭用ゲームの開発は分業化が進んでいて、巨大なプロジェクトになると自分が何を作っているのかが分かりにくいんです。
また、売れるか売れないかというマーケティングや営業の話もあって、何かアイデアを思いついたからといって、自由にゲームを作ることはできません。iPhoneアプリの開発を始めて、そうした閉塞感からぬけ出すことができました。
村井 南雲さんは、いろんなお仕事をされていますが、ときどき「山ごもり」をされるとお聞きしたことがあります。
南雲 はい、しますね、山ごもり(笑)。社長、プランナー、サウンドクリエイター。これが僕の仕事なのですが、やはり集中する時間を作りたいので、山ごもりをして、集中して音楽を作ったり、企画を考えたりすることがあるんです。
以前、一週間、会社を休んだことがあったのですが、その時はスマートフォンの未来をずっと自分なりに考えてみて、企画につなげたこともあります。
村井 ほかのデベロッパーさんを意識されることはありますか?
南雲 スクウェア・エニックスさんは高価格帯ですが、いいアプリを作って売れていますね。自信があるんでしょうね。そういう姿勢には憧れがあります。
インディーズのアプリには、企画はいいのにデザインが残念なものがありますね。あと、作り込みが足りない部分もあったり……。今後は、ということですけど、資金の面も含めてユードーがサポートしていきたいと思います。デザインだけでも、ユードーがお手伝いするということもあると思います。
村井:それ、すごいお話じゃないですか。どうやって応募すればいいんですか? 公式サイトからメールでいいですか?
南雲:Twitterでつぶやいてください(笑)。
ユーザーのレビューや声で決めていく
── 小さく生んで大きく育てるとおっしゃいましたが、それができたと思われるアプリはどれですか? また、そのアプリの開発に入った時に、いけるぞ! と実感された出来事はありましたでしょうか?
南雲 「Live Link 3G」は、プログラマーと「今年は音楽アプリをいっぱいやったから、来年は映像をやりたいね」と話していたら、3時間くらいで仕様のメインの部分ができてきたんです。それを仕上げてリリースしたのですが、そこから力を入れていくかどうかは、ユーザーのレビューや声で決めていきます。
もう少し説明すると、僕たちはレビューからユーザーさんのストレスを読み取って改善しようとしているんです。例えば「PianoMan」の場合は「知ってる曲でプレイしたい」という声がすごく大きかったので、JASRACさんとの交渉を進めて実現することができました。
南雲 「このアプリ行けるぞ!」と思うのは、リリースされて、AppBankさんや他のブログなんかを通してみなさんの声が聞こえてきてからですね。
いかに人が人に伝えたくなるアプリを作るか
── ダウンロード数はいきなりどん! といくものが多いのでしょうか? それともロングヒットになることが多いのでしょうか? これをやったからダウンロード数が伸びたというようなことはありましたか?
南雲 ほとんどのアプリがどん! といきますね。これはTwitterが一番速いと思っているのですが、アプリ名で検索してみて、どれくらいの時間でいくつくらいつぶやかれているか、それを数えてみると、だいたいの感覚がわかります。
よく言われるバイラルとは、手法のことではなく、いかに人が人に伝えたくなるアプリを作るかということだと考えています。例えばLiveLink3Gもランキング1位になりましたが、これはリリースから数日間、ほぼ1分に1回、誰かが「LiveLink3G」についてつぶやいていた結果だと思います。
リリース前のプロモーションはNG
── 国内と海外の市場で違うアプローチをとられていますか?
南雲 ユードーには専任のプロモーションスタッフがいて、毎日、海外向けにリリースを流して、コンタクトをとっています。海外のニュースメディア、ブログメディアとも、毎日やりとりしています。作ることと同じくらい、知ってもらうことに力を入れています。
ただ一点、注意しなければいけないのはアプリのリリース前にプロモーションをしてはいけないということです。以前、「Vocoder Synthesizer SV-5」」もヨーロッパ中心にヒットしましたし、「8Bitone」の発売前にアメリカの「Gizmode」に取り上げてもらって、ものすごく大きな話題になったのですが、残念ながらそれがリリース前で……という失敗をしたことがありました。