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10ラックユニットに512個のAtomが動作!

ネットワン、Atomスパコン「SM10000」を国内投入

2010年06月22日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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6月21日、ネットワンシステムズ(以下、ネットワン)は米シーマイクロ(SeaMicro Inc.)と販売代理店契約を結び、超省電力・省スペースサーバー「SM10000」を国内展開していくことを発表した。

Webのフロントエンドに最適なサーバーとは?

 発表会の冒頭においてネットワンシステムズ 代表取締役社長の吉野孝行氏は、ネットワンシステムズの事業戦略と今回の販売代理店契約について説明した。同社は、ネットワーク事業における差別化、サービス事業の拡充、ユニファイドコミュニケーションズ事業の促進、データセンター・仮想化事業の促進の4つの事業をメインに据えている。このうち、今回のシーマイクロの製品はデータセンターにフォーカスしたもの。

ネットワンシステムズ 代表取締役社長 吉野孝行氏

 吉野氏は調査会社の資料を基に、市場の伸び率以上に消費電力と設置面積が増加し、データセンターを保有する企業の利益を圧迫している現状を指摘した。「日本は99%を資源を輸入し、加工する国。しかもデータセンターは大都市に設置されていることが多く、スペースの節約は重要である」(吉野氏)。これに対して、今回投入するのがシーマイクロの超省電力・省スペースサーバー「SM10000」になる。「今までのラックマウントサーバーに比べ、1/4のスペース、消費電力で同じCPU能力を実現できる」(吉野氏)という。

既存のラックマウントサーバーに比べて1/4の消費電力・スペースで同等のCPU能力を持つ「SM10000」

 吉野氏は現在のサーバーを用途にあわせ、多くのCPU、多くのアクセスをこなすスケールアウト型、1個のCPUの処理能力を高くしていくスケールアップ型の2つに分類し、SM10000は前者のスケールアウト型のWebサーバーに最適と紹介した。「SLAをきちんとコミットできるシステムとして、自信を持って日本市場にシーマイクロ製品を提供する」(吉野氏)と述べ、ネットワンとしての意気込みをアピールした。

1つの製品にクラスタコンピュータを構成

 次にシーマイクロのCEOであり、創業者でもあるアンドリュー・フェルドマン氏が会社や製品の概要について説明を行なった。シーマイクロは2007年に設立されたベンチャーで、フォーステンやAMD、ジュニパーなどの経験者がマネージメントチームを構成している。米エネルギー省からの助成金も受け、「データセンターの経済に革命をもたらす」(ウェルドマン氏)超省電力・省スペースサーバーの開発を手がけている。

シーマイクロの創業者・CEOであるアンドリュー・フェルドマン氏

 同社のSM10000は、Atomベースの小型コンピュータを相互接続することで、「1つの製品にクラスタコンピューティングを構成する」というサーバー。高速マルチコアCPUがもてはやされている昨今に逆行する流れだが、CPUにAtomを採用することで、今までよりも高いレベルで超省電力と省スペースが実現できるという。フェルドマン氏は「単純な処理を数多くこなす必要のあるインターネット型のワークロードを見ると、AtomのようなCPUのほうがXeon/Opteronと比べてワットあたりの効率が3.2倍も高い」と語る。

インターネットのワークロードにおけるAtomとXeonのワットあたりの処理能力

 SM10000は、10Uのラックユニットに1.6GHzのAtomを最大512個搭載可能でありながら、2KW以下の消費電力で動作するという。1TBのDRAMを搭載するほか、ストレージモジュールやスイッチモジュールも用意されている。また、負荷分散装置やEthernetスイッチ、ターミナルサーバーの機能を格納する。

最大512個のAtomを10Uラックユニットに搭載可能な「SM10000」

 SM1000が既存のラックマウントサーバーと比べて、1/4の超省電力・省スペースを実現するための技術的なからくりとして、フェルドマン氏、そして続いて技術解説を行なったプロダクトマネージメント&マーケティング 担当バイスプレジデント、創立者であるアニール・ラオ氏は、大きく3つを挙げた。

プロダクトマネージメント&マーケティング 担当バイスプレジデント、創立者 アニール・ラオ氏

 1つ目はCPU I/O仮想化により、部品を90%削減し、マザーボードをクレジットカードサイズに小型化した点だ。独自設計のASICによって既存の部品を統合したことで、マザーボード上にはAtomとチップセット、メモリ、そしてSeaMicros ASICの3つの部品のみだけで構成される。「70~80個を部品を他社から調達しないで、ASICに統合したため、高いコスト効果も実現できた」(フェルドマン氏)。こうしたASICの開発により、8つのサーバーをわずか13×28cmのサイズにまで収めることに成功。ボード上のCPUが故障した際には、動的に切り離すことも可能だという。

Atomとチップセット、SeaMicro ASICを8組搭載したサーバーモジュール

 2つ目はサーバー同士を相互接続するインターコネクトだ。SeaMicros ASICのなかには、スーパーコンピュータ技術である多次元輪環を採用した1.28Tbpsの高速インターコネクトファブリックが格納されている。インターコネクトファブリックはロスレスで、耐障害性も高く、CPUの種類にも依存しない。ギガビットのEthernetのファブリックに比べ、遅延時間や電力消費も小さく済むという。

SM1000で搭載された1.28Tbpsのインターコネクトファブリック

 3つ目の技術は、演算処理を動的に割り当てる技術である。数百の単位でCPUプールを作成し、アプリケーションの負荷に合わせて、動的に処理を割り当てることが可能だという。

 こうしたSM10000の需要に関して吉野氏は「ISPのフロントエンドに最適。とにかく熱の発生がないし、トランザクションの振りわけに向いている」と述べており、まずはISPや通信事業者などをターゲットにするという。Atomサーバーのデータセンターでの利用はすでに実績があるが、ここまで高い密度での実装を行なった製品は過去に例がない。アーキテクチャ的にはAtomに限らず、XeonやOpteronなどでも対応できるとのこと。インターネットのトラフィックが「マイクロ化」する現在、注目すべき製品といえよう。

SM10000を挟んで立つネットワンの吉野社長(左)とアンドリュー・フェルドマン氏(右)

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