ドワンゴは13日、2010年度第2四半期(1〜3月)の決算説明会を開催し、本四半期で動画コミュニティーサービス「ニコニコ動画」の事業が黒字化したことを明らかにした。ニコニコ動画の売上高は14億2800万円で、事業にかかった費用は13億9900万円。
第2四半期をセグメント別で見ると、ニコニコ動画を含む「ポータル事業」の売上高は27億7800万円で、営業利益はマイナス1億4500万円。ドワンゴ全体の売上高は84億6300万円で、営業利益は7億3700万円だ。
ニコニコ動画は、2006年12月の開始以来、通信インフラの利用料や「ニコニコ大会議」などのイベントなどに投資してきたため、事業として赤字が続いていた。2008年7月には「黒字化担当」として、元NTTドコモ執行役員の夏野剛氏を取締役として招き、黒字化を外に向けて強くアピールするようになる(関連記事)。それから1年10ヵ月、ようやく「悲願」が達成されたこととなった。
※以下の資料はドワンゴのウェブサイトで公開されているPDF「平成22年9月期 第2四半期決算説明資料」より引用した。
動画共有サービスでは、動画のファイルサイズが大きいため、ユーザーが増えるとサービス提供者のサーバー通信費用がかさんで利益が出しにくくなるという状況がある。今回の黒字化を受けて、夏野氏は「あまり聞いたことがないので、世界で初めての黒字化した動画共有サービスではないかと思っている」とコメントしていた。
実は単月の収支で見ると、昨年12月に広告収入が増えたため黒字化していたとのこと。ただしこのときは四半期で赤字だったため報告しなかったそうだ。
プレミアム会員が解約せずに増えていっている理由について、ドワンゴでは「ニコニコ動画は新しいサービスやネタの投入スピードが速いから」と分析している。「毎月新しいサービスを自社開発で投入して継続しているのが最大の原動力。プレミアム会員のメリットについて、最初は接続のしやすさをアピールしていたが、最近は新しいことを真っ先に試せるとか、β版を先に触れるといった機能的な優位性にある」(夏野氏)
ニコニコ大会議などのイベントで「黒字化担当」をネタに観客の笑いを取っていた夏野氏だが、今後はその肩書きが使えなくなる。今後はどうするのかという質問に対して、「当分の間は『拡大戦略しながら黒字を維持する担当』として活動していく」と答えていた。
例えば、プレミアム会員について「当面の目標は100万人、中長期的にはその倍を目指していきたい」とコメント。収益モデルについても「事業として黒字になったけど、利益が少ないのでそれを伸ばしたい。ベースはプレミアム会員に支えていただいて、広告収入で利益幅を拡大したい」と見通しを語った。
なお、ネット生放送の分野でサービス競合となる「USTREAM」については、「一般の方がUSTREAMを使う場合、集客をTwitterに頼らざるを得ない。ニコ生のユーザー生放送は、それ自身がメディアのような役目をもっていて、まったく知らない人の放送をまったく知らない人が見に行くこともある。メディアの種類が違っていて、その辺の優位性があるのでは」と意見を述べて、「USTREAMの基本機能をすべて網羅した上で、さらにその上に行くサービスにしたい」とユーザー生放送の展望も明らかにしている。
