本はデジタルになりたくて仕方がない?
というわけでここまでブックスキャンの説明を聞いてきたが、ブックスキャンをもっとスケールアップしたサービスがある。Googleが手がける「Googleブック検索」だ。大型のスキャンマシンと大量の人手をかけて、各国の図書館に収蔵された図書のデジタル化が進んでいる。
デジタル化された書籍は、広告利益を分配する形で公開されたり、あるいは非公開とするなど、著作権を持つ人がその扱いを選択できる仕組みがすでに用意されている。もちろん、そこにも「誰がその選択を行なうのか?」「利益分配を行なうのが、Googleが強く関与する米国の団体で良いのか?」など様々な論点がある。
一方、国内ではスキャンによってデジタルデータ化した雑誌を販売していた「コルシカ」のサービス停止が記憶に新しいところだ。果たして「ブックスキャン」はどうなるのだろう?
大きいのはインタビューでも語られたように「出版業界から直接のクレームは寄せられていない」こと。Twitterを始めとする一般利用者サイドの声ももっぱら好感的。もちろん一方で法的にクリアしなければならない課題もあり、法律側の整備を求める声も大きい。
現在「メディア維新を行く」という連載で電子書籍を取り上げているが、今回の一件からも、熱心に本を購入し、所蔵する読者層にとっても「本のデジタル化」が切望されているという熱気にあふれた「事実」を目の当たりにすることはできた。
iPadなどのデバイスは次々登場する一方、KindleやiBooksといった販売プラットフォームは、現時点で日本での展開の方向性を示していない。「デジタルで本を読みたい」とシビレを切らした読者の心に、うまくはまったのがブックスキャンと言えるだろう。
著者紹介:まつもとあつし
ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環修士課程に在籍。ネットコミュニティやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、IT方面の取材・コラム執筆、ゲーム・映像コンテンツのプロデュース活動を行なっている。デジタルハリウッド大学院デジタルコンテンツマネジメント修士。著書に「できるポケット+iPhoneでGoogle活用術」など。公式サイト松本淳PM事務所[ampm]。Twitterアカウントは「@a_matsumoto」。
