ビジネスのデファクトになったPDF形式
「添付した用紙に必要事項を書き込んだ上で、ご返信ください」──仕事をしていると、こう書かれたメールを受け取ることがよくある。筆者の場合、記者会見のお知らせメールの出欠確認用としてほぼ毎日、このフレーズを目にする。
ほとんどの場合、「添付用紙」はPDFファイルだ。ワープロソフトのようにフォーマットが崩れる心配がなく、無料でビューアーがダウンロードできるために、ビジネス文書のフォーマットとしてはデファクトスタンダードとなっている。
その特性から、官庁や自治体に提出する書類のフォーマットとして採用されることも増えている。以前ならわざわざ用紙をもらいに役所まで行かなければならなかった申請書がオフィスや自宅でダウンロードして手に入れることができるようになった。
例えば、青色申告の提出書類もその一つで、夜中、ようやく段取りが整い、記入を始めたら書き間違いをして、せっかくもらってきた書類がパーになった……なんて経験がある筆者にとっては、ダウンロードを実現したPDFは拝みたいくらい有り難いものである。
PDFの弱点は書き込み機能?
冒頭に書いた記者会見のお知らせメールの場合、閲覧に限れば、本当に便利になった。以前ならオフィスでなければ受け取ることができなかったファクスや郵便が電子メールに置き換わったことで、外出先で予定を調整できる。スケジュールを決定するまでのスピードが圧倒的に早くなった。
しかし、その一方でPDFの不便さも感じる。例えば、PDFに必要事項を書き込んで返信するのはなかなか面倒だ。当然のことながらPDFビューアーだけでは足りない。
結果として、オフィスに戻り、電子メールで送られてきた書類をプリンターで印刷し、必要事項を手書きで書き込んで送り返す。
せっかく、外出先でメールを受け取ることができたのに、そのスピードを「必要事項を書き込んで返信」という作業に生かすことができないのだ。
実はその不便さを解消するために、PDF編集用ソフトを試してみたこともある。筆者のように必要事項を書き込んで返信するだけのためにPDF編集ソフトを使う場合、数万円する高価なソフトはコストパフォーマンスに合わない。ところが、低価格な編集ソフトは必要な箇所に、必要なことを書き込むといった作業が意外に簡単ではない。結局ソフト導入を断念した経緯がある。
