日本語入力システムと聞いて、誰もがまず最初に思い浮かべるほど知名度の高い「ATOK」。しかし、その機能と言えば正しい日本語の入力、さらに言えば、個人の利便性と生産性向上に重点が置かれていた。そんなATOKを法人向けでも活用させたい。そう考える意図はなんだろうか?
法人専用のATOKが登場
ジャストシステムは17日、法人向けに新規に開発した日本語入力システム「ATOK CE for Windows」を発表した。発売は3月12日で価格は1ライセンスあたり9450円。合わせて使用するサーバーソフトも「ATOK Business Solution 辞書配信システム5」と「ATOK Business Solution 用語管理データベース3」にバージョンアップした。発売時期と価格はそれぞれ3月12日/10万5000円と、5月21日/63万円。
CEは、Coorporate Editionの略。個人が自分でカスタマイズした変換辞書を持つのではなく、企業や部署内で変換辞書を共有して、作成するドキュメントに「組織の用語用字ルールをいかに効率よく反映するか」「業務のパフォーマンスをいかに上げるか」に重点を置いている。
これまでもATOKは法人で利用されてきた。典型的な例としては、病院、新聞社、官公庁が挙げられる。例えば、病院では電子カルテの導入が進んでいる。ここで問題になるのは、入力する用語に専門の医学/医療用語が多く、一般向けの辞書ではなかなか効率的な変換が行えないこと。また、診察室や医局、病棟などさまざまな場所にある端末でも同じ変換辞書を使いたいというニーズもある。
同様に新聞社では、表記や用語用字の統一が求められる。官公庁で作成する公文書でも表記方法に「ご案内」のようにひらがなと漢字が混じってはいけないなど、独自のルールがある。
こうした業種業態ごとで求められるニーズに応えるため、ジャストシステムは「ATOK Business Solution」(ABS)という辞書配信ソフトや、「Just Right!」という校正支援ソフトを提供している。これらのソフトと組み合わせて利用することで、専門の辞書を会社や部門全員で共有し、効率的な文字入力や表記統一ができるという触れ込みだ。
しかし、これまでの仕組みでは基本的に管理者が設定した専門の変換辞書を用語管理データベースに入れ、その内容を辞書配信システムで、サーバーに接続している端末のATOKに反映するという機能しか提供されていなかった。
フロントエンドとなるATOKそのものは個人向けの製品と基本的に同等で、ジャストシステムが用意した専門辞書をオプションで購入し、変換精度や入力効率の向上を図る点のみに主眼が置かれてきたとも言える。
一方ATOK CEは法人向けに新規に開発されたIMEである。従来の特徴は包含するが、企業内の用語統制や、入力業務の効率を上げるため、いくつか新しい試みが加えられた。