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「クラウドの弱点」をGoogleのUX担当者が語った

2009年11月19日 23時09分更新

文●小橋川誠己/Web Professional編集部

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DESIGN IT! Conference 2009

クラウドをテーマに開催された「DESIGN IT! Conference 2009」

 「デザインとITの統合」をテーマに掲げるカンファレンスイベント「DESIGN IT! Conference 2009」(主催:リックテレコム、DESIGN IT,LLC)が11月18日、東京・中央区のベルサール汐留で開催された。テーマは「クラウド時代のユーザー・エクスペリエンス」。話題のクラウドコンピューティングとユーザー・エクスペリエンス(UX=ユーザー体験)の最新情報を得ようと、多くの企業のIT/Web担当者やWeb制作会社、ITベンダーの関係者らが参加した。


クラウド業界は航空業界に学べ!?

 キーノートスピーチには、米グーグルのUXリサーチャーであるドナル・マウンテン氏とシニア・UXデザイナーのブレイデン・コウィッツ氏が「グーグル社の公式見解ではなくクラウド/UXの研究者の立場」と断ったうえで登壇した。「立ち込める暗雲」とのタイトルで両氏が語ったのは、UXから見たクラウドアプリケーションの可能性と課題だ。

ドナル・マウンテン氏とブレイデン・コウィッツ氏

写真左から、米グーグルのドナル・マウンテン氏とブレイデン・コウィッツ氏

 両氏は、クラウドの可能性を「いつでも/安心して/みんなで使えること」にあると説明した。Webブラウザーとネット回線さえあればどこでも利用でき、データの入ったノートPCを持ち運ぶような情報漏えいのリスクも少ない。1つの文書を大勢で共有したり同時に編集できるメリットもある。

 だが一方で、これらの可能性は同時にクラウドの抱える課題でもある。オフライン環境やサービス停止時にデータへアクセスできなかったり、サーバーの障害によってデータが消失するリスクもゼロではない。PCソフトなら販売終了になってもユーザーは使い続けられるが、クラウドはサービスが終わってしまったらそれもできない。クラウドサービス間の乗り換えも、現状では難しい。

 こうした課題に対して、両氏はいくつかの例を使いながら解決策を提示した。たとえば、信頼性を向上させるために航空業界のような取り組みを見習うべきだという。

「我々が、過去に墜落事故を起こした航空機や航空会社に乗れるのはなぜか? それは航空業界が、信頼性を重要なものだと認識しているからだ」

 航空事故の事実は事故発生とともにすぐさま公表され、フライトレコーダーやボイスレコーダーによって原因が徹底的に究明される。原因が究明されれば、同様の事故が発生しないよう、再発防止策がとられるサイクルが確立している。

「クラウド業界も航空業界のように、原因究明や情報公開が徹底されることで、信頼性を向上できる」。すでにグーグルや米セールスフォース・ドットコムはサービスの稼働状況をWeb上で確認できるダッシュボードを提供しているが、こうした透明性を高める取り組みを業界を挙げてさらに進めるべきだという。

「クラウドは『銀行』にたとえられるが、銀行も最初から信用されていたわけではなかった。多くの人々は、手元に金貨を持っているほうが安全だと考えていた。銀行が時間をかけて信頼を得ていったように、クラウドにデータを預けることもだんだん浸透していくだろう。我々は、業界みんなでクラウドをよりよくできると考えている」

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