お話を伺った3社のキーパーソン。NTTドコモ プロダクト部第5商品企画担当部長の板倉仁嗣氏(中央)、HTC Nippon(株)代表取締役社長のデビッド・コウ氏(左)、米グーグル アンドロイド統括部長のトム・モス氏(右) |
7月10日、ついに日本初となるAndroid端末「HT-03A」がドコモから発売された。日本では、まったく新しいプラットフォームとなる「Android」。発売に至っては様々な苦労があったはずだ。
実際の商品化はどのように進んだのか。企画・開発に携わった(株)NTTドコモ プロダクト部第5商品企画担当部長の板倉仁嗣氏、米グーグル アンドロイド統括部長のトム・モス氏、HTC Nippon(株)代表取締役社長のデビッド・コウ氏の3名に話を聞いた。
個人市場を積極的に開拓したい
日本初のAndroid端末HT-03Aは、「ケータイするGoogle」がキャッチフレーズ。ウェブブラウザーを利用してパソコン用のウェブサイトを観たり、Google マップやGmailといったGoogleのサービスを手軽に楽しめる画期的なスマートフォンだ。
製品化のきっかけは2008年1月にさかのぼる。
新しいユーザー層に訴求していきたいと話す、ドコモの板倉氏 |
なるべくたくさんの人々に使ってほしいと話すHTCのデビッド・コウ氏。より幅広い層へというメッセージはドコモとHTCの共通見解だという |
クラウドを使うのに最適なサービスと話す、グーグルのトム・モス氏 |
板倉 「グーグルとドコモは2008年1月に、iモード向けの検索サービスなどで提携しましたが、そのころからAndroid端末の開発にも取り組もうという話が出てきました。
その製品化において、スマートフォンのジャンルで世界をリードしているHTCが候補に挙がったのです。
ドコモはiモードサービスを10年間続けてきましたが、それとは別のところで“フルインターネット”のサービス(パソコンでの閲覧を基本にしたウェブサイトやウェブサービス)が発展してきています。そんな世界を、ドコモのユーザーにも体験してもらいたいというのがきっかけでした」
これまで個人向けのスマートフォン市場は、どちらかといえば他社がリードしており、ドコモは個人よりも法人向けの市場を意識していた。しかし、今回の「HT-03A」は異なる。より個人ユーザーを重視した戦略を持っているという。
板倉 「いままで当社が展開したスマートフォンでは、法人向けソリューションをより強く意識する傾向があったのは事実です。しかし最近では、スマートフォンに興味を示す個人も増加する傾向があります。
昨今ケータイ業界全体の成長が鈍化していますが、スマートフォン市場はまだまだ成長の可能性があります。HTCはこれまでもいくつかのスマートフォンをドコモ向けに投入してきましたが、HT-03Aでは両社とも、法人向けだけではなく、既存のスマートフォンユーザーから初心者まで幅広いユーザー層をターゲットにしたいという共通認識を持っています」
デビッド・コウ 「HT-03Aはできるだけ広範囲のユーザーに使ってもらいたいと思っています。HT-03Aには、とても快適なインターネットアクセス、GmailやGoogle マップといった様々な機能性を盛り込みました。
ドコモは日本最大のキャリアで、ユーザー層も幅広い。ぜひ多くの人に使ってもらいたいと考えています」
板倉 「HT-03Aは、いままでのドコモ端末にはないユーザーインターフェイスを備え、フルインターネットを心地よく使える端末に仕上がっています。だからこそ、新しいモバイルの世界に興味のあるユーザーを中心に使ってもらいたいんです。
Googleサービスをモバイル環境に持ち出してフルに利用ができるように最適化されているのが魅力です。Google マップはパソコンでも見られますが、HT-03Aなら出先で使え、なおかつ地磁気センサーなどいままでとは違った体験も得られます。
さらに、その先にはAndroid マーケットというアプリケーション配布システムがある。マッシュアップによって、いろんなソフトが融合して新しい体験が広がっていく、魅力的な世界です」
幅広いユーザーを狙うという考えはグーグルも同じだ。
トム・モス 「HT-03Aは幅広いユーザーに広がると信じています。特にパソコンでインターネットを使いこなしている人には最適な端末と言えるでしょう。ケータイでどこでもGoogleのサービスを使えるのは魅力的です。ケータイでフルインターネットが簡単に楽しめ、Android マーケットにより新しいアプリが出てくる。新しいインターネット、新しい世界、新しいことを経験できるマシンに仕上がっているのです。特にクラウドサービスを使いたい人にはベストチョイスと言えます」