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時事ニュースを読み解く “津田大介に聞け!!” 第27回

ダウンロード違法化が「延期」していたワケ

2008年10月22日 12時41分更新

文● トレンド編集部、語り●津田大介(ジャーナリスト)

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内容は去年と一緒


── なぜ今になって突然、ダウンロード違法化についての話が出てきたんでしょうか?

津田 私的録音録画小委員会は、今年の春から完全にデッドロック状態になりました。結果、時間切れでiPodへの課金は実現できなかったから、せめてダウンロード違法化だけでも成立しないと著作権者としてメンツが立たない、ということなんでしょう。それについてはJEITAも反対していないですから。


── ダウンロード違法化の内容については、昨年と同じですか?

津田 ええ、同じです。簡単にまとめると、法改正の目的は、違法着うたサイトやP2Pを使ってカジュアルコピーをする若者を減らしたいという点にあります。対象となるコンテンツは、録音と録画、つまり音楽と放送、映画ですね。

 責任を問うのは民事だけで、刑事罰は課さない。警察が逮捕するのではなく、被害を受けた権利者側が訴訟を起こすということです。あとは「情を知って」という制限事項が付いていて、違法コンテンツと知らないでダウンロードしてしまった人は責任を負わなくていいことになっています。加えて、ストリーミングは対象外なのでYouTubeやニコニコ動画に上がっている違法ファイルをブラウザで閲覧するだけなら対象外です。ただし、ツールを使って保存する場合は対象になります。



Xデーは「2010年1月1日」か?


── 著作権法30条はいつぐらいに改正されそうでしょうか?

津田 政局が安定していれば、来年の通常国会にかけられて5月か6月に成立するでしょう。そうなると一般的な慣行から、法律の施行は再来年(2010年)の1月1日からになると思います。


── 20日の小委員会では「来年は私的録音録画小委員会が開かれないかもしれない」と言われていたとの報道もありました。

津田 文化庁の川瀬さん(著作物流通推進室室長の川瀬真氏)の発言ですね。オープンで話し合うと泥沼になるだけだから、権利者とメーカーを呼んで、クローズドな状態で利害調整にしようという考えがあるのかもしれません。

 ポイントはそこに消費者が呼ばれるかどうかです。主婦連のような既存の消費者団体を呼べば消費者の声を聞いたことになるのかというと、それも微妙な部分がある。

 そもそも補償金は名目上、消費者が権利者団体に払っていることになっています。消費者は完全にこの問題について「当事者」ですから、こうした話し合いに参加させないわけにはいかないでしょう。そういう部分も水面下で調整されてしまうと、消費者にとってはよくわからないまま物事が決まっていくということになってしまいます。

 今回の小委員会でも発言しましたが、僕はこの問題は文化庁だけで話し合ってもラチがあかないと思っています。経産省、総務省、知財本部などの委員会でもこの問題について議論が持たれているわけですから、そうした関係省庁がすべて関わる形の大きい審議会を作って、改めてステークホルダー(利害関係者)をすべて呼んで話し合うべきじゃないでしょうか。


── ダウンロード違法化に反対する消費者はこれから何ができますか? 

津田 小委員会で「ダウンロード違法化について、パブリックコメントをもう一度取ってほしい」と発言しましたが、却下されてしまいました。そうなると、あとは国会で止めるしかない。議員に働きかけるなど、政治的な交渉しかないと思います。


筆者紹介──津田大介


インターネットやビジネス誌を中心に、幅広いジャンルの記事を執筆するジャーナリスト。音楽配信、ファイル交換ソフト、 CCCDなどのデジタル著作権問題などに造詣が深い。「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」や「インターネット先進ユーザーの会」(MiAU)といった団体の発起人としても知られる。近著に、小寺信良氏との共著 で「CONTENT'S FUTURE」。自身のウェブサイトは「音楽配信メモ」。



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