750Hz付近が若干突き出る一方で、5~7kHzに落ち込みを確認
SE-200PCIの特徴は、前ページで述べたとおり。以降は計測結果と試聴による音質の評価を行なっていく。
図1 アナログステレオ出力の計測結果。図中、緑色の線がリファレンス、オレンジ色の線が計測結果となる。 |
まずはオンキヨーが明らかに力を入れているステレオアナログ出力から見ていこう。図1の上側にある“周波数特性グラフ”を見てほしい。リファレンス(緑の線)と比べてグラフが相似形であれば理想的だ。また、折れ線は上にあればあるほどよい。
実際の計測結果を見ると、750Hz付近が角のように突き出ていることが分かる。また、5~7kHz付近も相似形とは言い難く若干落ち込んでいる。ただし全体的な出力レベルはかなり高い。ちなみに、マスターボリュームは10段階で8くらいの設定とした。
次に図1の下側にある“位相特性グラフ”を見てほしい。この場合の“位相”とは、おおざっぱに言うと左右の発音タイミングだと思ってもらって構わない。左右の発音タイミングがほんのわずか(1ms以下)でもずれると“位相ずれ”と呼ばれる状態が発生して、気持ち悪い音に聞こえる。もっとひどく位相がずれていると「シュワシュワ」という音が聞こえ始めたりする。よって位相はそろっているのが一番なのだ。グラフは、真ん中にあるオレンジ色の一本線がピシッと入っている状態がいい。この場合、出力位相はまったく乱れていない。
厚みと重量感を兼ね備え、ボーカルも前に出る
上記の結果を踏まえて、実際にステレオ試聴を行なってみた。比較対象機は、米digidesign社の「ProTools|HD Accel3+192 I/O」。ただし、再生ソフトには、米アップルコンピュータの「iTunes7.0.2」を選んだ。これは、SE-200PCI/ProTools|HDともに、使用者数が多いソフトと思われるためだ。
結果は“すっきりクリアで透明感の高いProTools|HD”と“厚みと重量感のあるSE-200PCI”という印象だ。超高域は意外と差がないのだが、高域でリズムを刻むハイハットなどがいる帯域が、「落ち込む」と言うほどではないものの、「やや弱く」感じられる。これは計測結果でも指摘した5~7kHzの軽い落ち込みが効いているのだろう。
逆に750Hzが少し持ち上がっているせいか、中低域が軽くふくらんで聞こえる。数字の上では、重低域から低域にかけては特性通りであるのに、実際の音が“ふくよか”に聞こえるのはこの2つが原因と推察できる。SE-200PCIでは、ボーカルが一歩前に出て聞こえるような印象だが、これは恐らくハイハットの帯域が少し落ちているので、そのぶんボーカルが邪魔されることなく前に出てくるのだろう。ノイズ感は特に感じない。
音質傾向は違うものの、価格にして数十倍の192 I/Oと劇的な差がないのは立派だ。ただし、192 I/Oや米Creativeの「Sound Blaster X-Fi」などを筆頭に、最近のサウンドカードは“クリーン&ハイファイ”を狙った製品が多い。この点はSE-200PCIとはまったく異なる味付けだ。SE-200PCIの音はどちらかというと“太い音のするオーディオ機器”といったイメージだ。
ここまでくると「どちらが優秀か」というより「どちらが好きか」という嗜好の問題になると思う。実際に購入する際には、このあたりの違いを十分吟味すべきだろう。“クリーン&ハイファイ”という言葉は魅力的だが、ハイファイで高域がバリバリ出ている製品の音は「耳に合わない」と感じるユーザーも意外に多いので、注意が必要だ。