「PIXUS MP600」はキヤノンの複合機ラインナップで主力(普及)モデルに当たり、9600×2400dpiの印刷解像度と1plの小ドロップを採用するのは昨年の同社ベストセラーモデル「MP500」と同様だ。インクは染料系CMYK+顔料系Bkの5色インクで、上位モデルである「MP960」のような最高写真品質とはいかないまでも、コストと印刷品質を両立させている(関連記事)。
大幅に増加したノズル数により
約1.75倍の印刷高速化を実現
キヤノンの複合機の主力モデル「PIXUS MP600」。 |
印刷解像度やインク構成は従来機と同様ながら、ノズル数はMP500のBk320ノズル/カラー各256ノズルから、BK・カラーともに各512ノズル、シアンとマゼンタは1024ノズルへと大幅に増えている。解像度が同じでノズル数が増えるということはヘッドの幅が広くなり、ヘッドが1往復する際に印刷できる面積が広くなるということ。つまり、印刷速度が向上するというわけだ。さらに用紙送りの精度を高める排紙部エンコーダの追加(MP500は給紙部のみ)により、フチなし印刷などでも用紙後端部での速度低下が少なくなった。こうした改良により、同社では「約1.75倍の速度アップとなった」という。
黒いボディーを銀色のシェルが覆うようなデザインは同社のiPシリーズを思わせる。天面はフラット、側面はすべて垂直なデザインなの物が溢れるような机でも置きやすい。 |
スキャナ部はCIS(密着型イメージセンサー)を搭載し、フィルムスキャンには対応していないのはMP500と同様だが、MP500では1200×4800dpiだった光学解像度は2400×4800dpiに向上した。
奥行きで26mmのコンパクト化を実現した新・ピザボックスボディー
排紙トレイとなっている前面パネルを開けると奥にはDVD-R/CD-R印刷用のトレイがある。メモリーカードスロットはCF、SD、メモリースティック、スマートメディアに対応。メディアスロットの下にはデジタルカメラや携帯電話などから印刷できる前面USBポートと赤外線ポートが用意される。 |
特に大きく変わったのは本体のデザインで、MP500ではブラックの本体から円弧状の操作パネルが前面に張り出したようなデザインだったが、本機ではスキャナや操作部のフタを閉じると角が丸くすっきりとした箱状になる。まるで2004年に発売されてプリンターのデザインに一石を投じた「PIXUS iP」シリーズ(複合機ではなくプリンター専用機)の“ピザボックス”ようなシンプルなデザインは、複合機としてもかなりコンパクトな印象だ。実際のサイズはMP500と比べて、高さでは11mm大きくなっているものの奥行きが26mm短いなど、設置面積がコンパクトになったので家庭内に置く場合にもありがたい。
カーソルとリング状のダイヤルを中心に構成された操作パネル。液晶ディスプレーの下には2つのボタンが配置され、メニューによってはサブメニューや機能ヘルプに入ることができる。 |
上位モデルMP960と同様に操作パネルにはリング状のダイヤルを持ち、クルクルと回るアニメーションメニューによる操作やナビ機能などにより操作は簡単だ(関連記事2)。液晶ディスプレーは2.5インチで、MP960の3.5インチほどのインパクトはないものの従来機よりも広い視野角のパネルを採用し、横方向からの視認性は非常によくなった。
スキャナー部を開くとインクカートリッジの交換が可能。カートリッジ部はLEDで光り、交換するインクが一目で分かる構造だ。 |
フォトインクを用いない4色機(顔料系Bkがあるため正確には5色だが)は、高品質な写真印刷というよりもカラーも印刷できる文書用プリンターという印象があるものの、9600dpiの高解像度と1pl小ドロップによって印刷品質は非常に向上してきており、ぱっと見では印刷物や印画紙の写真と区別できないほどだ。1色あたり512ノズルのヘッド幅はMP960と変わらず、印刷速度もほぼ同等であることを考えれば、よほど写真クオリティーにこだわらなければ本機でも十分な印刷品質と速度が得られるだろう。
印刷サンプル パソコンからデジタルカメラ画像を印刷したものをスキャンした。L判、きれい、ふちなし印刷、キヤノンプロフォトペーパーを使用。印刷時間は42.58秒。フォトインクを用いないにもかかわらず肉眼ではドットはほとんど確認できない。拡大(1200dpiでスキャンした等倍画像)には元のデジタルカメラ画像を並べている。 |
スキャナがCIS方式なのでポジ/ネガフィルムをスキャンできないほか、開いた本の綴じ部に近いところ(スキャン面から離れた部分)が読み取りにくいなどの弱点はあるものの、銀塩フィルムのストックがあまりないであろう、最近のデジタルカメラユーザーには、速度・品質・ボディーサイズなど、かなりバランスの取れた複合機と言える。
コピーサンプル 紙焼き写真をMP600でカラーコピーしたものを並べてスキャンしてみた。コピー元(左)に比べてやや赤っぽくなっているが、目で見るとそれほど色の違いは気づかない。きれい、ふちあり。スキャン動作を含めて印刷時間は48.71秒。 |
PIXUS MP600の主なスペック | |
製品名 | PIXUS MP600 |
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印刷解像度 | 9600×2400dpi |
印刷速度 | 約24秒(L判写真の印刷時、スーパーフォトペーパー) 約51秒(L判写真のコピー時、同上) |
使用インク | C/M/Y/Bk(染料)/Bk(顔料):C/M 各1024ノズル、Y/染料Bk/顔料Bk 各512ノズル |
用紙サイズ | A4~A5、ハガキ、L版、専用名刺 |
給紙容量(ASF/カセット) | 各150枚 |
スキャン解像度 | 2400×4800dpi |
スキャン階調 | RGB各16bit |
液晶ディスプレー | 2.5インチTFT液晶パネル |
インターフェース | USB 2.0、Bluetooth(オプション) |
本体サイズ | 450(W)×389(D)×194(H)mm |
重さ | 約10.1kg |