誰もが買う売れ筋の製品だけでなく、特定の層にターゲットを絞ったマウスが登場したことも、今回の製品発表の特徴だろう。
エルゴノミクスデザインを採用した“Natural Wireless Laser Mouse 6000”は象徴的だ。同社のエルゴノミクス系マウス製品の系譜を見れば明らかなように、Natural 6000は、これまでのなかでも際だって“エルゴ”的な過激なデザインだ。今まで「文化的に非対称を嫌う地域がある」という理由で右利き・左利きの区別がある製品作りを避けてきた同社としては、かなり思い切った右利き専用モデルとなっている。
Natural Wireless Laser Mouse 6000 |
正面から見ると、かなり傾いていることが分かる | 親指が載る部分はラバー仕上げで、ぴったりと安定する |
過去のエルゴノミクス製品。今回のモデルの過激さが分かる | 過去に試作された非対称モデル。モデルの段階で却下されたという |
エルゴノミクス研究の専門家としてマウスやキーボードのデザインに携わるダン・オデール博士によれば「全体の10%と見積もられている左利きユーザーのうち、約半数の5%は右手でマウスを操作している」ため、左利き用マウスの需要は必ずしも大きくないという。しかし、以前からマイクロソフトのエルゴノミクス系マウス製品は右利き左利き両用だったわけだから、5%の市場を捨てでも、特定のニーズに、より深いレベルで応えようというビジネス判断の変化が読み取れる。球状マウスのサイズは、大小さまざまなサイズの手でも違和感のない形状が注意深く選ばれたとはいうが、このエキゾチックなマウスが万人に向けとは考えづらい。
対称性の束縛から解放されたマウスは、劇的とも言える形状変化を遂げている。ヒントは野球ボールだったという。
Natural 6000は野球ボールをヒントに開発されたという | Natural 6000の初期の試作モデル。丸すぎてボツになったそうだ |
Natural 6000のコンセプトモデルの数々 |
立ち上がった姿勢で人間が自然に手を挙げると、“恨めしや”のポーズではなく、飛行機の操縦桿を握るようなポーズになる。指も自然と丸まっている。オデール博士によると、手首は、このポジションを中心に回転する。通常のマウスを使うときのデスクトップに手首を置いた体勢は手首が内側に回る限界に近いところで、これは不自然であるそうだ。またこの体勢では手首中央に圧力がかかり、これが腱鞘炎やトンネル症候群といった症状の一因となるという。Natural 6000は、手をほとんど机に垂直に立てる位置で使えるため、手首への負担が少ない。
エルゴノミクス研究専門家のダン・オデール博士(Dan Odell, PhD) | 小指の側面が卓上に付くため手首に負担がかからない |
ヘビーゲーマー向け製品
“Habu”や“Wireless Notebook Presenter Mouse 8000”も特定のユーザー層に向けて機能を特化したマウスだ。日本語の蛇の名前から付けたというHabuなど、名前からしてゲーマー向けだ。「ゲーマーたちはネット上で略語を多く使う」(マーケティング担当者)からだ。
Habuは、米Razer社との共同開発だ。Razerは、特に欧米のゲーマーたちに人気が高いゲーム用周辺機器メーカーで、微妙で正確な操作にこだわるゲーマーから高い評価を得ているという。USBポートの通信レートを高めたり、アイドリング状態をなくして反応時間の遅れをなくすなどしているほか、光学センサーの解像度を400~2000dpiの間でマウス上のボタンで切り替えられる。また、7つあるボタンはソフトウェア的にカスタマイズ可能であるばかりでなく、サイドパネルを外してオプション品と交換することで、ボタンの幅をユーザーの好みで選べるという。
ゲーム用マウスの“Habu” | サイドパネルは交換式でボタン位置を変えられる |
ビジネスパーソン向け製品
“Wireless Notebook Presenter Mouse 8000”はプレゼンテーションするビジネスパーソンやリサーチャー、教師など向けに開発された斬新なマウスだ。レーザーポインターとプレゼンテーション操作ボタンをコンパクトなマウスに統合してある。
マウス底面にボタンを備え、プレゼンテーション資料のページ送り・戻りができる。マウス操作を終えてプレゼンに入るときには、マウス上部のボタンでマウスモードからプレゼンモードに切り替える。明確にモードを分けたことで誤操作を防げるという。また、マウスを手の中で回転しやすいようにボディーの側面にはラバーを多用するという工夫もあるそうだ。
Wireless Notebook Presenter Mouse 8000 |
底面にプレゼン資料操作用ボタンを装備 | レーザーポインターも装備 |