今年も世界中から川口に映画人が集まった |
埼玉・川口市のSKIP(Saitama Kawaguchi Intelligent Park)シティにおいて15日、世界に先駆けたデジタルシネマの祭典として行なわれている映画祭“SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2006”が開幕した。今年が3回目の開催で、主催は埼玉県/川口市/SKIPシティ国際映画祭実行委員会/特定非営利活動(NPO)法人 さいたま映像ボランティアの会。
この映画祭は、デジタル制作され、デジタル方式で上映できる世界中の映像作品を、“長編部門”(国際コンペティション)と“短編部門”(国内コンペティション)の2部門に分けて評価し、それぞれにグランプリを選出するもの。今月23日に行なわれる表彰式まで、連日参加作品の上映が行なわれる。また19日には、デジタルシネマの“配信”と“上映”の最新動向について、国内外のパネリストを迎えてのSKIPシティ・シンポジウム“加速するデジタルシネマビジネス ~配信と上映をめぐる世界の動向~”が開かれる。
埼玉県知事の上田清司氏 |
開催初日の15日はオープニングセレモニーに続いて、オープニング上映の招待作品“花田少年史”の上映と舞台挨拶が行なわれた。オープニングセレモニーでは、最初に主催者であるSKIPシティ国際Dシネマ映画祭実行委員会会長で埼玉県知事の上田清司氏が挨拶に立ち、「世界中から注目される映画祭として、デジタルシネマビジネスの中心的な存在として前進していきたい」と述べた。
川口市長の岡村幸四郎氏 |
次に同会の副会長で開催市・川口市市長の岡村幸四郎氏が挨拶に立ち、「第1回のオープニング・セレモニーの参加者は60人程度で、招待作品上映には2~30人とまばらで寂しい状況にがっかりしたものですが、3年目にして、こうして立ち見が出るほどまでになりました。オープニング上映の前売り券も完売し、当日券を求めて早くからお並びいただいた方も多くいらっしゃいました。ボランティアや浄財など、市民のみなさんの協力によるものです。今後も市を挙げてますます盛り上げていきたいと思います」と感慨深げに語った。
総合プロデューサーの八木信忠氏 |
総合プロデューサーの八木信忠氏は、「“桃栗三年柿八年”ということわざがありますが、桃と栗なら、やっと実を結んだことになります。柿の実を実らせるには、観客のみなさんにどういう利益をもたらすかを考えなければなりません」と更なる奮起を促すコメントを述べた。
参加作品を紹介する瀧沢裕二ディレクター | 参加された作家陣と審査委員、主催者が一堂に。2列目の左端からシネカノンの李氏、1人おいて奈良橋氏、高嶋氏が並ぶ |
続いて本映画祭のディレクターである瀧沢裕二氏により、長編部門(国際コンペティション)と短編部門(国内コンペティション)の作品紹介が行なわれ、海外から参加した長編部門に出品した作家陣、ならびに短編部門に出品した国内の作家の方々が紹介された。
同時に長編部門の審査委員である演出家・作詞家で映画“ラストサムライ”“SAYURI”のキャスティングディレクターとしても知られる奈良橋陽子氏、(有)シネカノンの代表取締役の李鳳宇(リ・ボンウ)氏、そして昨年に引き続き、短編部門(国内コンペティション)の審査委員長を務める俳優の高嶋政伸氏が順に紹介された。
フランスとポルトガルの提携映画祭からゲストも参加!
デジタル化によって誰もが映画・映像を制作できる時代となったわけだが、本映画祭はいち早く“デジタルシネマの映画祭”として世界に先駆けて行なわれてきた。この動きは世界的な広がりを見せつつあり、本映画祭との提携も始まっている。
たどたどしい日本語でのスピーチが暖かかったKINOTAYOのミシェル・モトロ会長 | リスボンのジョゼ・アマラル・ロペス副市長 |
今回は提携している2つの映画祭からもゲストが参加した。フランス・パリで開催される“KINOTAYO~デジタル時代の日本映画祭”からはミシェル・モトロ(Michel Motro)会長が参加。「おいしいおそば、美しい富士山のように、いい映画はデジタルでもいい映画です」と日本語でウィットに富んだメッセージを読み上げた。また、ポルトガル・リスボンでこの6月に1回目が開催されたばかりの“リスボンビレッジ国際Dシネマ映画祭”からもジョゼ・アマラル・ロペス副市長、ディレクターのマルコ・エスピニェイラ氏が登壇し、メッセージを贈った。
リスボンビレッジ国際Dシネマ映画祭のディレクター、マルコ・エスピニェイラ氏 |
セレモニーの最後には、リスボン映画祭の短編部門最優秀作品を受賞した“SPIN”が上映された。時間や運命を操作できるDJが、街角で起こる事故を幸せの瞬間に変える様子をコメディータッチで描いたものだが、デジタルならではの編集技術で効果的な映像を作り上げていたのが印象的だった。
司会は元北海道放送アナウンサーで、現在はフリーアナウンサーの森田真奈美さん |
安藤 希さんら“花田少年史”の主演2人と監督が舞台挨拶
休憩を挟んでオープニング上映として招待作品“花田少年史~幽霊と秘密のトンネル~”の上映が行なわれた。上映に先駆けて監督の水田伸生氏、主演の須賀健太くん、安藤 希さんを迎えての舞台挨拶が行なわれた。
どことなく親子のようにアットホームだった3人 |
同作は一色まことの人気漫画“花田少年史”を実写映画化したもの。水田監督は日本テレビ放送網(株)でのテレビドラマ出身で、今作が映画初監督作品となる。須賀くんは“ALWAY 三丁目の夕日”で淳之介役の好演も記憶に新しい名“子役”。安藤さんは“ガメラ3 邪神<イリス>覚醒”や“さくや妖怪伝”などでのクールな演技が印象的な若手女優だ。
緊張していますとしながらも会場を沸かせた水田伸生監督 |
水田監督は「初監督作品がこんな素晴らしい映画祭に招待いただき光栄です。(自身が大ファンという)原作と肩を並べることができるか不安でした」と緊張気味に語った。また、デジタルのメリットについての質問に対しては、「カットの40%以上がCGとの合成でした」と答え、CGと分からないようにするには? との質問に対しては、「いいえ。分かると思いますよ」と、あっけらかんと正直に答えていた。確かに本編で見たところ、CGや合成のカットは分かってしまうものも多かったが、分かってもOKな演出がなされていて、意外に違和感のない絵作りがなされていた。
平成の名子役! 須賀健太くん |
須賀くんは「主演だったので緊張しました。今日は満席に近い状態でうれしいです」と語ると、水田監督がいたずらっぽく「そんなことないよ、あそこらへんが空いてる」と席を外している関係者席を指差したり、元気な一路役を演じるにあたって気をつけたことは? との質問に須賀くんが「ないです。素なんです。似ているっていうか、同じです」とストレートに答えると、また水田監督が「それなりに指示しましたよ(笑)」と突っ込むなど、軽妙なやり取りがあり、撮影現場の楽しさが舞台挨拶からも伝わってきた。須賀くんも「夏休みの次に楽しかった」と感想を述べていた。
VFXを多用した映画作品との縁が深い? 安藤 希さん |
安藤さんは、須賀くんとの共演について「いつも一緒だったので、ゲームをしたりして、いたずらをされたり、楽しかったです」と答えた。また、幽霊役を演じる上での苦労について聞くと「以前から幽霊役をやることが多かったので苦労はなかったです」と答えると、ここでも水田監督は「それなりに指示しましたよ(笑)」と述べ、会場を沸かせた。
最後に須賀くんは「家族で楽しめる映画なので、また家族と見に来てください」、安藤さんは「誰にでも見てもらえると思います」と語り、水田監督は「クライマックスのシーンでは2人が本当に懸命に演じていますので、ぜひお楽しみください」と語った。
終了後は関係者を集めてオープニングパーティーが行なわれた |
オープニング上映後はオープニングパーティーが催された。挨拶に立った上田知事は「定着するまで、10年は続けていきたいと思います」と語ると、続いて岡村市長は「知事が10年続ける、とおっしゃったが今初めて耳にしました」と喜びをあらわにした。
恒例の鏡割りも行なわれた |
また、岡村市長はSKIPシティが映画制作の拠点として成長しているとし、その動きのひとつとして、SKIPシティの開発前の街区をオープンセットに活用した撮影が行なわれることを明らかにした。撮影が予定されているのは、“半落ち”“チルソクの夏”の佐々部 清氏が監督を務める、こうの史代さん原作の“夕凪の街 桜の国”(平成16年度(第8回)文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞作品)だ。
昨年同様「真心こめて」と語った短編部門審査委員長の高嶋政伸氏 |
KINOTAYOのモトロ氏は、「これからの監督は自分の作品がいつ誰が見るのかがわからない。映画なのか、テレビなのか、ケータイなのか。チャレンジしなければならない。今日上映された(花田少年史)のはいい例。デジタルが特別な所に使われるのではなく、グラフィックの効果が感情的なところに訴えかけてきていた」と語った。
SKIPシティ敷地内には開発前の広大な空き地があり、オープンセットを組んで映画撮影が行なわれる |