米アドビ システムズ(Adobe Systems)社は21日、東京・恵比寿の恵比寿ガーデンプレイス内ウェスティンホテル東京にプレス関係者を集め、2006年度第1四半期(2005年12月3日~2006年3月3日)の業績発表会を行なった。この発表会には、米国本社からCEO(最高経営責任者)のブルース・チゼン(Bruce Chizen)氏が来日し、司会進行役との掛け合い(Q&A形式)で具体的な内容をチゼン氏自らが説明するという、昨年9月の業績発表会と同様の手法で行なわれた。
![]() | 赤のチェックに金の小紋というパワータイで会見に臨んだ、米アドビ システムズのCEOのブルース・チゼン氏 |
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今回発表された業績は以下の通り。売上高については第1四半期として過去最高の業績を達成し、その要因としてクリエイティブスイート製品および“Adobe Acrobat”シリーズの堅調な需要があったことを挙げている。なお、この業績は昨年12月に実施された旧米マクロメディア(Macromedia)社の買収にかかった費用を計上したもので、そのため前年同期に比べて増収減益となっている。
2006年度第1四半期決算
- 売上高/前年同期比
- 6億5550万ドル(約773億4900万円)/39%増
- 営業利益/前年同期比
- 1億3000万ドル(約153億4000万円)/24%減
- 純利益/前年同期比
- 1億510万ドル(約124億180万円)/31%減
事業プラットフォーム別売上比率
- Creative Solutions
- 58%
- Knowledge Worker Solutions
- 26%
- Enterprise&Developer Solutions
- 7%
- Mobile&Devices Solutions
- 1%
- Other
- 8%
地域別売上比率
- アメリカ
- 48%
- EMEA(ヨーロッパ/中東/アフリカ)
- 32%
- アジア
- 20%
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旧マクロメディアの事業を加えたため事業分野の名称や分類が、従来とは異なっている。Digital Imaging and Videoの大部分(Adobe Photoshop/Premiere/AfterEffectsなど)を“Creative Solutions”に統合し、新たにFlexやAdobe LiveCycleなどのサーバー製品群をまとめた“Enterprise&Developer Solutions”、携帯電話機や組み込み製品向けのFlash PlayerやSDK/開発ツール群などをまとめた“Mobile&Devices Solutions”という2つのカテゴリーを新設した。なお、Mobile&Devices Solutionsの数字は、旧マクロメディアと合併した際の会計処理の都合で、本来であればもう少し大きな割合を占めるはず、と説明した。
今回のチゼン氏の話で特に興味深かったのは、PDFとFlashの統合に関する言及だ。アドビ システムズが以前から提唱している“エンゲージメント・プラットフォーム(高い信頼性、大きなインパクトを持ち、相手=クリエイターやユーザーの心に訴える、より深い関わりを持つような製品群)”について質問された際に、「今年の年末までには、PDFとFlashを統合した技術を提供したい」と語った。そのメリットとして、「PDFの高い信頼性とセキュリティーに、Flash Playerのアニメーションやグラフィックス、ビデオを扱える技術が加わることで、今までにない魅力的なことが実現できる」「例えば、住宅ローンの申請のアプリケーションで、政府機関や銀行が求める高い信頼性やセキュリティーだけでなく、同時にリッチなグラフィックス、アニメーション機能によって顧客も財務データをチャートやグラフで見やすくなり、フィードバックを得ることもできる」と語った。
さらに記者からのQ&Aで、「PDFとFlashの統合は、新しいプレーヤー(ソフト)が登場するということか?」と聞かれると、「今後、おそらくFlashとPDFの両方に対応し、HTML機能も盛り込んだプレーヤーを出していくことになると思う。ただし、これをスタンドアロンで出すのか、(既存のプレーヤー=Adobe ReaderやFlash Playerの)拡張機能として出すのかは、まだ確定していない」と答えた。
チゼン氏自身が「確定していない」と述べたからには、これ以上は推測の域を出ないが、ヒントがまったくないわけでもない。昨年10月に米国アナハイムで行なわれた“Macromedia”名での最後の祭典となった、開発者&ユーザーイベント“Macromedia MAX 2005”の基調講演でFlash+HTMLというデスクトップアプリケーション(開発コードネーム:Apollo)が紹介されていたからだ。
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Macromedia MAX 2005で紹介されたApolloのアーキテクチャー | 同会場で紹介されたApolloの画面 |
このときの説明では、Apolloはウェブブラウザーに代わる物ではなく、HTMLで記述された資産を生かしながらFlashコンテンツも融合して表現できる、SOA(サービス指向アーキテクチャー)を個人向けに具現化したデスクトップアプリケーションということだったが、果たしてFlash+PDF+HTMLという新プラットフォームがどのような世界をもたらすのか。今年の年末には米マイクロソフト社の新OS“Windows Vista”と並んで、話題を集めるかもしれない。
