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日本オラクル、“Oracle OpenWorld Tokyo 2006”で米オラクルCEOのラリー・エリソン氏の基調講演を開催

2006年03月02日 21時17分更新

文● 編集部 内田泰仁

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日本オラクル(株)は2日、東京国際フォーラムで1日に開幕した“Oracle OpenWorld Tokyo 2006”において(会期は3日まで)、米オラクル社 最高経営責任者のラリー・エリソン(Lawrence J. Ellison)氏による基調講演を開催した。“Oracle OpenWorld Tokyo”で同氏が講演を行なうのは1998年以来8年ぶり。

米オラクル社 最高経営責任者のラリー・エリソン氏

エリソン氏によると、オラクルの2006年度の売り上げ目標は150億ドル(約1兆7600億円)。目標達成に向けた同社の取り組みの方向性は「イノベーションと買収」によるビジネスビジネス/製品/技術の強化と拡大だといい、今後も技術開発や企業買収に対して積極的な投資を行なっていくという。同社は、米ピープルソフト社や米シーベル・システムズ社などの買収を経て、エンタープライズ向けソフトウェア企業として世界トップ規模の企業となり、またデータベースやCRMなど多数の分野において、トップシェアを獲得しているという。

エリソン氏は「ナンバーワンであることは非常に重要」なことであると強調するが、この理由として同氏は、トップシェアを占める分野があればそこにより多くのリソース(エンジニアや投資)を集中し、さらにその分野のソフトウェアの“価値”を高めることが可能で、トップシェアを得られるだけの顧客を持っていれば、そのボリュームで投資の回収も可能だと述べている。同氏は、より多くの企業にソフトウェアの“価値”を届けることがソフトウェアベンダーの使命であることから、トップを獲得することとその効果は製品の“価値”向上のために重要だとした。また、買収の対象とする企業については、「その分野でトップの地位にある優秀な企業」だといい、多くのユーザーから支持を集めるトップ企業を買収することにより、同社の製品や戦略を強化していくと述べた。

『Oracle Secure Enterprise Search 10g』の画面。写真は、キーワードにマッチした“カレンダー”カテゴリー中の結果を表示しているところ。ログインしているユーザーがアクセスできる情報のみが表示される

エリソン氏は講演の中で、注目すべきエンタープライズ向けソフトウェアのトピックとして、“オンデマンド・アプリケーション”“サーチ”“グリッド・コンピューティング”“ミドルウェア”“セキュリティー”などを挙げている。この中でも特に“サーチ”に関して、同社および日本オラクルは、企業向けの検索ソリューションとして、『Oracle Secure Enterprise Search 10g』を新たに発表した。

『Oracle Secure Enterprise Search 10g』は、データベースやコンテンツ管理システム上の情報や、ファイルサーバーなどに置かれたドキュメント、ポータルや電子メール、グループウェアなどのエンタープライズ・アプリケーションといった、企業が有するあらゆる情報からデータを検索するソリューション。ユーザーID管理基盤と連携することで、そのユーザーがアクセス権限を持つ情報のみを結果として出力するため、生産性とセキュリティーの向上を同時に実現しているのが特徴のひとつ。また、エリソン氏は、『Oracle Secure Enterprise Search 10g』の導入の容易さも強調しており、ダウンロードして導入すれば、1~2日程度で社内の情報を検索できるようになるため、導入後すぐにそのメリットが感じられ、短期間で投資対効果が実感できるという。

エリソン氏によると、サーチは非常に面白い技術領域だといい、米グーグル社の「パブリックなサーチ(=インターネット上の情報の検索)」を高く評価。しかしその一方で、企業に求められる「プライベートなサーチ」、すなわちイントラネット上の情報のセキュアーな検索の技術についてはまだまだ各社ともに未発達で、同社は「世界最高のデータベースを育ててきた技術の集大成」として、自社のイノベーションを集結し、企業内で高い利用価値のある検索システムとして『Oracle Secure Enterprise Search 10g』を開発したという。

またこのほかに、オンデマンド・アプリケーションやグリッド・コンピューティング、ミドルウェアについても今後の展開を言及。まず、オンデマンド・アプリケーション分野については、シーベルの買収により、この分野のトッププレイヤーで強力な競合相手である米セールスフォース・ドットコム社と同等の規模に成長したといい、今後さらに注力したい分野としている。また、「まだその時代は始まったばかり」だというグリッド・コンピューティングについては、UNIXサーバーやメインフレームよりも、低価格で高性能の環境を実現できる技術と強調。オンデマンドで性能を拡張可能で、耐障害性にも優れ、データベースをはじめとして多方面に活用が可能な新時代のITシステムを支える技術だと評した。ミドルウェアに関しては、現在は米International Business Machines(IBM)社についで第2位というポジションにいるが、オープン化/標準化/統合化をテーマに、今後も展開を強化していくという。



Q&Aセッション中のエリソン氏

この日エリソン氏は、基調講演の終了後にプレス関係者を対象としたQ&Aセッションを行なっている。この中では、日本経済の復調について、ソフトウェア業界の再編の今後、サービス指向アーキテクチャー(SOA、Service Oriented Architecture)やオープンソースについてなどの同氏の考え方や方針などが語られた。同氏の回答は以下のとおり。

日本経済の復調
日本経済の復調はオラクルにとっても非常に喜ばしく、オラクル自体の取り組みを大きく変えることなく、急速な成長が期待できる。
ソフトウェア業界再編の今後
自動車業界にプレイヤーが数社しかないことを考えると、再編・統合はまだまだ進むと予測。今は“終わりの始まり”の時期かもしれない。
SOA
オラクルはSOAに100%コミットしている。しかし、SOAはITシステムの抱える全ての問題を完全に解決できる“魔法”ではないという点は理解すべき。オラクルがSOAに移行していることに対してリスキーだとする声もあるが、移行しないリスクは非常に大きく、かつて変化を嫌って凋落した米国自動車産業などを反省材料に、常に変化することに対応していく。
オープンソース
神話的、神秘的な響きがある単語。エンジニアやコミュニティーの力により、無償で提供され、素早く更新されていくというイメージが非常に強いが、イノベーションを支援してきたのは、オラクルやIBM、インテルなどの企業であり、今後もそれは継続される。

講演の冒頭に登壇した日本オラクルの代表取締役社長兼最高経営責任者、新宅正明氏。今回の“Oracle OpenWorld Tokyo 2006”について、「オラクルの技術だけでなく、製品を活用したビジネスもテーマ」と語り、日本の“Tournaroung(転換)”、ITを活用した成長経営の新スタイル、企業におけるこれからのITの役割、そしてオラクルの最新技術の4つを見どころとして挙げた

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