マスコミは“掲載したいもの”しか掲載しない
オーマイニュース社 ニュースゲリラ本部本部長 ソン・ナクソン氏。背後のパネルは世界各国に散らばる市民記者。日本人らしき氏名も多数あった |
そのような中で、市民の間には、「自分が発言できるような場所を作りたい」「一方的なニュースは嫌だ。自分達も参加したい」という機運が高まっていました。そして時代的に、記者達が一方的になりすぎてマスコミによる弊害が出ていた頃だったので、市民記者制度を立ち上げるべきとオーマイニュースが誕生しました。
旧来のマスコミは“真実を解明できるのは自分達しかいない”という自負を持っていました。しかし、そうではなく、読者もいくらでも情報は得られるし、ニュースを生産できるのだという意識が高まったのです。
そうした経験を経て、何が真実で何が嘘なのか解明したいという意識が市民の間で高まり、社会運動が盛んになった時代があったのです。社会運動家達はビラや小冊子を作りマスコミとは違う視点で情報を発信していましたが、いかんせん伝播力は弱いものでした。しかし民主化運動が盛んになるにつれ、情報を伝える努力をもっと組織的に行なおう、皆に伝えようという意思が高まりました。市民がニュースを生産して消費する、オーマイニュースのようなシステムを望む土壌が形成されたのです。
「自分の記事が社会を変えられる」という期待
インターネットの場合、掲載した記事には読者からの反応がすぐに返ってきます。コメントを受け付ける機能を実装していれば、その記事が抱えている問題点に対して、すぐに指摘が寄せられます。過去のマスコミは、誤った報道をした時に謝罪するような習慣はなく、隠し通そうとしていました。しかし、インターネットの場合は隠しようがありません。皆が瞬時に指摘するので、記事が間違っていたら「間違っていた」と正直に言わなければならない環境があります。オーマイニュースの存在意義は、そこにあるかもしれません。
記事の書き出し | 読者からのコメント | |
オーマイニュースの職業記者の記事に、読者からのコメントが付いた例。内容は、ES細胞論文捏造疑惑の黄 禹錫教授に関するものだ |
そもそも人間には、自分の考え方と他人の考え方は違うのか、自分が疑問に思っていることは他人も疑問に思っているのか、そういったものを確認したい欲求があると思います。“記者”というのは、その欲求を満たすことができる活動をしているので、我々は“記者”を“職業”ではなく“活動”だと見ています。疑問や、意見をまとめていく活動=記者をやってみたいから市民記者になりたいという人もいます。
市民記者が書く記事の分野は多岐にわたっていますが、どんな小さな記事でも社会に対する影響力を持っています。自分の身の回りの小さな出来事が積み重なって、社会が変わっていくということを私達は経験しています。自分の書いた記事が社会を変えられるというのは、市民記者の活動を続ける原動力になるのではないでしょうか。
記事の書き出し | 読者からのコメント | |
市民記者の記事に、読者からのコメントが付いた例。内容は地方のグルメ紹介 |