サン・マイクロシステムズ(株)は31日、米サン・マイクロシステムズ(Sun Microsystems)社が開発を進める3Dデスクトップ環境“Project Looking Glass”に関するプレスセミナーを開催した。解説を行なったのは、米国で同環境の開発に携わる、米サンのソフトウェアCTOオフィス、シニア・スタッフ・エンジニアの川原英哉氏。
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米サン・マイクロシステムズ、ソフトウェアCTOオフィスのシニア・スタッフ・エンジニア、川原英哉氏 |
“Project Looking Glass”の開発チームは、米本社のソフトウェアCTOオフィスの“Advanced Development Group”が担当。川原氏によるとこのグループは、5~10年後に向けた研究を行なうというサンの研究所や、「1~2年先の製品リリースに向けた開発を行なう製品チームとは独立した組織で、3~4年先の製品化に向けた研究や開発を行なっているとしている。「シリコンバレーのソフトウェア開発企業によくある」多国籍なチームで、米国、カナダ、中国、インド、イギリス、日本など各国のスタッフで構成されているという。
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“Project Looking Glass”使用時のデスクトップ。この状態ではごく一般的なデスクトップ環境と大差ないが…… | ウィンドウを複数立ち上げ、そのうち1枚を画面右側に“最小化”せずに片付けた状態。奥行きを利用した表示方法 |
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現在の『Sun Java Desktop System』の構成 |
川原氏は今から20年前となる1984年を「2次元GUIにおいて大きな技術革新があった年」とし、米アップルコンピュータ社の『Lisa』や、マサチューセッツ工科大学の“Athena Project”を紹介。しかし、これらの現在のデスクトップ環境の原点といえる“2次元”のGUI環境が登場して以来20年、大幅にコンピューター自体のスペックは向上しているのにもかかわらず、デスクトップのGUI環境には劇的な変化がなく、増える情報量(同時に立ち上げるウィンドウやアイコンの数、メニューの階層表示など)の前に、無理が生じてきていると指摘している。
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過去に考案された3次元デスクトップ環境。左はファイルマネージャー、右はファイルをアバターがファイルなどを取りに行くという動作をするものとのこと。いずれも使い勝手はあまりよくなかったという |
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現在の“Project Looking Glass”の構造。このうち、左側のブロックのコードはほとんどがJavaで書かれているという |
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画面は実験的にシミュレーターを組み込んだ例。重力やウィンドウの質量が設定されているが、ウィンドウが画面下まで落下すると、重力の影響で倒れてしまうため、このまま利用することはできないという。開発中のジョークといったところか | 将来に向けた展開 |
今後は、物理シミュレーターを組み込んだウィンドウの挙動の追加などが考えられているというが、「先進的なところを行き過ぎると使い勝手が悪くなるので、加減が必要」だとしている。また、質疑応答の中で、自由度の高いウィンドウデザインが可能になる反面、操作性の統一性が失われてしまうのではないかという質問が出たが、これに対しては、オープンソース化により広く意見を求め、デザインのガイドラインを練り上げていくとした。また、「当初はクレイジーなデザインのアプリケーションも登場してくるだろうが、使いにくいものは自然に淘汰され、結果優秀なものが残る」という見通しも示しつつ、「今の2次元デスクトップをベースに、要所要所に3次元化したデザイン機能を盛り込んでいく保守的な方法も考えられる」としている。
また、3次元デザインされたアプリケーション作成にあたっては、「2次元アプリで見落としていること」を洗い直し、「同じ対象を違う角度から見ることにより、ユーザーにとって直感的にわかるようなインターフェース」を目指していくことがヒントになると述べた。
なお、今後の開発に向けた最近のトピックスとして、同社では日本人によるコミュニティーをJava.net内に設立したほか、開発スタッフに、「現代GUIの祖」(川原氏)の元・米アップルコンピュータのフランク・ルドルフ(Frank Ludorph)氏が参加するといった話題が紹介された。これに関して川原氏は、「彼(ルドルフ氏)が20年前に作った2次元GUIの概念を、彼自身が新しく作り変えるということに因縁めいたものを感じる」とした。
