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NECパーソナルプロダクツの群馬事業所 |
日本電気(株)(NEC)とNECパーソナルプロダクツ(株)は16日、群馬県太田市にある保守サービス拠点、群馬事業所のプレス向け見学ツアーを開催した。見学ツアーには、NECの執行役員常務 パーソナル事業担当兼NECパーソナルプロダクツの代表取締役社長の片山 徹氏、NECパーソナルプロダクツの執行役員常務の増田博行氏、執行役員の安達俊行氏、執行役員の加藤秀章氏らが出席。同社の成り立ちや事業内容などを説明した。
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NECの執行役員常務 パーソナル事業担当兼NECパーソナルプロダクツの代表取締役社長の片山 徹氏 | 執行役員の加藤秀章氏 |
NECパーソナルプロダクツは、パソコンの開発/製造からマーケティング/販売ならびにサポート事業までを一貫して行なうことを目的としてエヌイーシーカスタムテクニカ(株)とエヌイーシーカスタマックス(株)の2社を合併して昨年7月1日に発足したもので、今月1日には保守サポート事業を行なっていた100%子会社のNECカスタムサポート(株)を吸収合併している。
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群馬事業所がある太田市の概要と周辺の企業 |
今回見学した群馬事業所は旧NECカスタムサポートの所在地で、渡良瀬川と利根川に挟まれ、三洋電機(株)/富士通(株)/富士重工業(株)/松下電器産業(株)などの工場が多く立ち並ぶ“利根川ライン”と呼ばれる場所にある。敷地面積は8万7805m2、従業員数は約550名で、70%程度が修理担当となる。
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同事業所の修理扱い量の変化 | NECパーソナルプロダクツの事業領域。NECのコンシューマー向け製品の企画・開発・生産・保守・サポート全般と、ビジネス向け製品の開発・生産を行なう |
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場内のあちこちにスローガン“超一流のサポート&サービス 目指すはCS最強軍団”が掲げられている |
元々はデスクトップパソコンの開発・生産を行なうNEC群馬工場であったが、2001年10月にNECカスタムテクニカの群馬事業場に変更、さらに2002年7月にはNECカスタムサポートとして業態を開発・生産からサポートサービスへと大きく転換した。その際に一部従業員は引き続き開発・生産を行なうためにNECの米沢事業所などへ異動したが、多くの従業員が業務転換に対応して保守・修理などのノウハウをゼロから取得し始めたという。現在では北海道を除く東日本全土の保守・修理を行なっており、担当エリアは日本全土の50%をカバーする。
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業態変更当初、および4ヵ月後の構成変更 | 1年4ヵ月後の2003年11月に現在のセル&サポート方式が完成した | |
修理ライン構成の変遷。当初は1人1工程で製品に交互に取り掛かるリレー方式だったが、その後個人のスキルを上げてペア&サポート、さらに1人ですべての作業をこなすセル&サポート方式へと完成したという |
特に修理や“リフレッシュPC”(ユーザーから使用済みパソコンを買取り、メンテナンスを行なってソフトや付属品を整えたメーカー保証付きの中古パソコンとして販売するシステム)の分解/組み立て作業を行なう“11工場”と呼ばれる建物は、もともとの生産ラインを活用して効率的な修理・保守ラインをわずか2年間で構築できたという。これは工場の生産ラインの効率化・生産性向上を図るアドバイザーから意見を聞き(業態変更後も定期的にチェックを受けているという)、それを積極的に取り入れることで、まず部品の供給ラインと修理・メンテナンス完了品の排出ラインを別々に設けてスムーズな流れを作った。さらに使用面積の効率化を図って配送部門も同じフロアに用意できたことが大きいという。
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リフレッシュPCの診断・査定および分解、部品交換、清掃、梱包のライン(AB2ライン構成) | 補修や部品交換、清掃が終わった完成後のリフレッシュPC。ラインの最後に梱包が行なわれ、あとは配送手続きを行なうだけという状態になる。ACアダプターの電源ケーブルを新品に交換することで事故率が下がったという | バックアップ/リストア用CDを生産する8台のCDライターが並ぶ。1日に800枚を生産するとのこと |
人の面でも、従来は1人1工程(診断⇒部品交換⇒完了検査のうちの1つ)しか行なえなかったが、技術支援や修理・保守マニュアルの作成により、1人で全工程を行なえるようになった。それでも個々人によってスキルのばらつきがあるため、補助を行なうための“サポート技術部”(元々設計製造を行なっていた従業員が担当)をフロア内に設置して、作業の停滞時間を最小限にとどめている。修理・保守マニュアルはウェブブラウザー経由で工場内のあらゆる場所から参照でき、古くはPC-9801のメンテナンス手順まで収録されているとのこと。
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ノートパソコンの修理ライン。写真奥から修理部品を“水すまし”と呼ばれる人が指定数量ずつ供給し、修理が完了した製品は手前に送られてくる。写真を撮っている場所で、各ラインから排出される完成品を回収する仕組み | サポート技術部の様子。修理ラインに呼び出しボタンが用意され、押されると数秒以内にサポート要員が駆けつける |
修理・リフレッシュPCの組み立てのほか、同事業所には購入後の相談を受け付ける“121コールセンター”も設置されている。コールセンターは全国に4ヵ所あり、同事業所の規模は全体の1/5程度を占める。在籍する相談員は140名、相談件数は1日あたり1600件程度(全国合計では相談員850名、相談件数は1日あたり8000件)に上る。
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見学会の当日に発表された遠隔サポートサービス“リモートサポート”のデモンストレーションも行なわれた |
ここで担当する相談員も元々パソコンの開発や生産に携わっていた従業員で、電話の応対や聞き取りなど、本人の意向と電話サポートという特殊な業務への適性を確認したうえで選抜したという。ただ、元々はパソコンの組み立てしかしてこなかったため、知識は持っていてもタッチタイピングに慣れておらず、手書きのメモを後からテキストに書き起こすといった非効率なプロセスも当初は見られた。しかし、従業員らにタッチタイピングによる効率向上を説明したり、効率的なサポートの実現を表彰してスキルアップの補助金(パソコン購入や資格所得などに利用)を提供する“アワーズマイレージ制度”を導入することで、ほとんどのサポート担当者が1年以内にタッチタイピングをマスターし、サポート業務の大幅な効率改善が見られたという。同様のインセンティブ制度(報奨金制度)は、保守・修理やリフレッシュPCの部門にも設定されており、効率向上に一役買っている。
見学ツアーに先立って挨拶に立った片山氏は、“人と社会に、最善の解を。”というNECパーソナルプロダクツの企業理念を掲げながら、「パソコンの世帯普及率が上昇し、(新規購入に比して)買い替え/買い増し需要が拡大している。ブロードバンド回線の利用者が拡大し、さらに今年は五輪イヤーということもあってデジタル家電と(高機能パソコン)の競争が激化している。こうした市場の変化を受けて、購入時の相談からサポート、活用提案、保守サービス、次期製品の購入案内まで顧客(カスタマー)の一連の行動をサポートし、CS(カスタマーサービス)No.1を目指す。そのために保守診断や修理時間の短縮、保守担当者のスキル強化による品質の向上が重要となる。ここで得られた顧客の声を開発・生産の現場にもフィードバックし、CRM(Customer Relationship Management、顧客情報管理)戦略の強化、グローバルSCM(Supply Chain Management、ITを活用した生産・物流情報の管理)による市場在庫の削減を目指し、ひいては地球規模での省エネ・省資源化と効率化につなげていきたい」と同社の狙いを語った。
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CRM戦略強化の図式 | サポート・保守を皮切りにグローバルSCMの構築を目指す |
