日本ギガバイトのRADEON X800搭載カード『GV-R80P256D』 |
ATIテクノロジーズジャパン(株)は11日、東京・大手町の経団連会館で記者説明会を開催し、AGP 8x対応の新グラフィックスアクセラレーターチップ“RADEON X800”を発表した。RADEON X800搭載グラフィックスアクセラレーターカードは提携ハードウェアベンダーから順次発売される予定。
PCビジネス・ユニット セールス&マーケティング部長の森下正敏氏 | デスクトップ・ディスクリート・グラフィックス マーケット・ディベロップメント・グループ シニアマネージャーのトシ・オクムラ氏 |
説明会には、PCビジネス・ユニット セールス&マーケティング部長の森下正敏氏、アプリケーション・エンジニアリング・グループ部長の信垣育司(のぶがきいくじ)氏、カナダATIテクノロジーズ社のデスクトップ・ディスクリート・グラフィックス マーケット・ディベロップメント・グループ シニアマネージャーのトシ・オクムラ(Toshi Okumura)氏が出席、製品の位置づけや技術説明などを行なった。
プレゼンテーション資料より。RADEON X800の特徴 | RADEON X800のピクセルシェーダーユニット。4パイプラインが4つ並列に動作している |
RADEON X800は、従来のハイエンドモデルである“RADEON 9800 XT”の2倍のパフォーマンスを発揮するというAGP対応グラフィックアクセラレーターチップのフラッグシップモデル(RADEON 9x00シリーズはRADEON 9800 XTを除いて併売される)。1億6000万トランジスターを集積し、浮動小数点演算処理性能は192GFLOPS。消費電力の低下や発熱の低減が期待できるというLow-k膜(低誘電体層絶縁膜)0.13μmプロセスルール(銅配線)で、台湾ティーエスエムシー(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company、TSMC)が製造する。
RADEON X800の内部アーキテクチャーの解説図 | RADEON X800のメモリーインターフェース |
内部アーキテクチャーは、ピクセルシェーダーパイプラインが16本(従来は8本)、ジオメトリー(頂点計算)エンジンパイプラインが6本(同4本)、メモリーインターフェースは256bit(64bit×4)と、RADEON 9800から拡張されている。メモリーは新たにDDR IIIをサポート。これはグラフィックスアクセラレーターメーカーとメモリーチップメーカーが共同で開発したもので、メモリー内に終端抵抗(ターミネーター)を設けることで、カード設計が容易になるほか、メモリーアクセスのタイミングを高速化する、いわゆるチューニングにおいても従来より有利になるという。
16パイプラインに強化されたピクセルシェーダーを利用して、リアルな表情を表現している。ちなみにこのCGの女性がルビー | こちらは被写界深度(Depth Control)のデモ。フォーカスが手前から奥へと移動していく様子がリアルタイムに計算、描画されていた |
RADEON X800では新たにグラフィックスアクセラレーション機能として、
- 3Dc
- HYPER Z HD
- VIDEOSHADER HD
の3つが追加されている。
3Dcは、オブジェクトの立体感/質感をリアルに表現するための情報である“Normal Map(法線ベクトルマップ)”とオブジェクトの表面模様(テクスチャーデータ)をまとめて圧縮し、高画質映像を高効率に表現するための手法。従来の一般ユーザー向け3Dグラフィックスアクセラレーターでは、法線ベクトルマップのデータが膨大になり、グラフィックスメモリーの大部分を消費してしまう。そのため、代用としてあらかじめ凹凸状態を指定したデータとそれに合わせて陰影加工を施したテクスチャーデータを組み合わせる“バンプマッピング”という手法が利用されている。3Dcでは、Normal Mapとテクスチャーデータを1/4程度まで圧縮でき、3Dゲームなどでも実用的な描画速度とバンプマッピング以上に緻密な立体表現が可能になると説明する。
法線ベクトルマップ(Normal Map)の解説図 | 3Dcを利用してリアルな質感を表現可能になった左側に対して、右は従来のバンプマップによる表現 |
HYPER Zは、3Dオブジェクトを構成する最小単位ポリゴンの奥行き情報(Z値)を管理するZバッファーを圧縮管理する機能で、従来のRADEONシリーズから搭載している。HYPER Z HDは、高解像度表示に対応するため、より多くのポリゴンで構成される3DオブジェクトにおいてもZバッファーを効率的に圧縮し、グラフィックスメモリーの利用効率や3Dグラフィックスの描画パフォーマンスを向上するという。
VIDEOSHADER HDは、ピクセルシェーダーパイプラインを利用してビデオエンコード/デコードの高速化を図る機能。MPEG-1/-2/-4に対応。そのほか、ピクセル単位で補正するIP(インターレース⇒プログレッシブ)変換や動き補間機能などのビデオプロセッサー機能を内蔵する。
RADEON X800のラインナップ | 従来のRADEON 9800XTと、RADEON X800 PRO/XT Platinum Editionのパフォーマンスの違い |
RADEON X800は、今月4日からすでに出荷を開始している“RADEON X800 PRO”と今月下旬出荷予定の上位モデル“X800 XT Platinum Edition”という2タイプがラインナップされている。それぞれコアクロックは475MHz/520MHz、メモリークロックは900MHz/1120MHz。両者の違いは動作クロックのほか、ピクセルシェーダーパイプラインが12本/16本という点がある。
台湾ASUSTeK社が出展したRADEON X800搭載カードは、ファンが青く光る | 中国(香港)のSAPPHIRE TECHNOLOGY社が出展したRADEON X800搭載カード |
会場ではRADEON X800 PROを用いたリアルタイムレンダリングの3DCGデモンストレーションが行なわれたほか、日本ギガバイト(株)、台湾ASUSTeK Computer社、台湾Micro-Star International(MSI)社など、ビデオカードメーカーの参考出展などが行なわれた。リアルタイムレンダリングの3DCGは、主人公のルビーという女性が約8万ポリゴン、敵として出てくる忍者やボスキャラがそれぞれ約6万ポリゴンで構成され、画面全体では1シーンあたり440万ポリゴンを処理しているという。これらの3Dオブジェクトにリアルタイムシャドー(影生成)やリフレクション/リフラクション(光の反射/透過処理)などの効果をかけながら、リアルタイムに滞りなく表示するシーンが見られた。