このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

【最新パーツ性能チェック(Vol.21)】ATI、GeForceと最上位を張り合う第三のGPU“Volari”完全解剖

2004年01月28日 17時51分更新

文● アスキープラス編集部 野口岳郎

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

最新仕様のテストほど好成績

 結果は見てのとおり、非常にばらつきが大きい。テストセットの中で一番良かったのは、Direct X9ベースのAquamark。ほぼRADEON 9800ProやGeForce 5900Ultraに迫る性能を記録している。実際には9800XTや5950Ultraも存在するので、現行の最上位クラスと並ぶ、とはやや言いかねるところだが、ここまでの性能を最初から出せるというのはすばらしい。3DMark 03の結果もまあまあだ。現在の「トップ下」レベルの売れ線、GeForce 5700UltraやRADEON 9600XTを一歩引き離している。これもDirect X9を使ったテストであり、今後登場するVertex/Pixel Shader 2.0時代のゲームに対してパフォーマンスが期待できる。
 Unreal Tournamentでは、5700Ultra/9600XTとほぼ並び、3DMark 2001では5700Ultraにあと一歩、9600XTと並ぶ程度だ。UnrealはDirect X8.1ベースでヘビーな描画を行なうことで知られ、3DMark 2001は、4番目のテスト(Nature)がDirect X8.1を使っている。

 これ以外のテストについては、もうひとつ振るわない。Final Fantasy XI ver.2では、比較的強い「高解像度」モードでも5700Ultra/9600XTにかなりの差をつけられているし、Comanche 4、x2ではGeForce 5600やDelta Chromeとスコアを争っている。ただx2はPixel Shaderを使うような処理はほとんどないらしいし、Comancheは処理としてかなり軽めなので、こうしてみると、Volariは、Direct Xのバージョンが新しくなるほど、あるいは負荷が大きいほど、よい成績を残すように見える。

3DMark 03の結果 Aquamark 3の結果 Final Fantasy XI Benchmark ver.2の結果
3DMark 03の結果Aquamark 3の結果Final Fantasy XI Benchmark ver.2の結果
Quake3 Arenaの結果 Commanche 4の結果 x2 Rolling Demoの結果
Quake3 Arenaの結果Commanche 4の結果x2 Rolling Demoの結果
Unreal Tournament 2003の結果 3DMark 2001の結果

個別性能テストではむしろ基礎体力が充実

 ただ、テスト項目をもう少し詳細に見ると、必ずしもDX9が強いとも言い切れない面が見えてくる。たとえば3DMark 03では、ゲームテストの1がDirect X7ベース、2と3がDirect X8.1ベース、DX9ベースなのは4番目のテストだけだ。このそれぞれで、比較対象となるミドルハイ(GeForce FX5700Ultra、RADEON 9600XT)、ハイエンド(GeForce FX5900Ultra、RADEON 9800Pro)とそれぞれ比べると、テスト1(DX7)はミドルハイと同程度、テスト2、3(DX8)はミドルハイ+25~40%とかなりのリードを奪うものの、テスト4ではミドルハイ比で80%強程度の性能となっている。つまり、3DMark 03のスコアを稼いだのは、むしろDX8レベルでのテストなわけだ。

 ここでVertex Shader、Pixel Shaderという、Direct X8以降のキーポイントとなる機能の性能を見ると、ここも意外な結果だ。Vertex Shaderで5700の半分以下、9600XT比でも3分の2ほどの性能しかない。Pixel Shaderのほうは、5700の80%、9600XT比では半分強と、これも振るわない。Vertex Shaderが強い5700、Pixel Shaderが強い9600XTに対し、Volariは見るべきところがないわけで、なぜこれでDX8のテストで大きなリードが得られるのか、悩んでしまうほどだ。

3DMark 03における4つのゲームの個別成績
3DMark 03における4つのゲームの個別成績
3DMark 03における描画機能の成績
3DMark 03における描画機能の成績

 一方、基礎体力とも言うべきテクスチャの貼り付け能力を見ると、シングルテクスチャ、マルチテクスチャともに結果は優秀。5700や9600XTをはるかにしのぎ、シングルではGeForce FX5900Ultraに並ぶ。8パイプラインのチップを2つ乗せているだけのことはある、と言えよう。しかし、基礎体力が高くてVertex/Pixel Shaderが弱いのなら、最近のテストほど不利になるはずなのに、実際はその逆になっているのが不思議だ。

ドライバのチューンがどこまで可能かが鍵

 今回のテストでミドルハイの2機種と比べると、x2とFinal Fantasyでの負けは痛いものの、3DMark 03、Aquamarkでは完勝、Unrealや3DMark 2001で横並び。まあ、勝ったり負けたりではあるが、DX9の最新テストで強いことを考えると、今後使うビデオカードとしての魅力は備えていると言えそうだ。ただ、問題は価格。ミドルハイとした5700Ultraや9600XTの2万円台前半に対し、Volariボードは5万円台半ばと、2倍以上である。2つのGPUなど、コストがかかることは理解できるが、この値段なら、すべてのテストでVolariを上回れるGeForce FX5900やRADEON 9800を買えてしまう。

 ただ、2つのGPUを使って効率的に描画をさせるには、ドライバ作成はかなり苦労しそうだ。テストによって性能が大きくばらつくのも、あるいはこの、2GPUのハンドリングがうまく行えていないという可能性もありそうだ。これについては、今後シングルのVolari V8 Ultraなどが出てきたときに、性能を比較することでわかってくるだろう。

 ドライバの話で言えば、そもそもこのアーキテクチャのチップが登場したのすらほんの数ヶ月前。GeForce、RADEONというアーキテクチャに比べ、まだはるかにチューニングの余地があるだろう。すべてのテストでAquamark並の性能が出るのなら、現在の価格でも十分競争力が出てくる。Duoに関しては、ドライバが進化できるかどうかが、今後の商品としての価値を決定することになりそうだ。一方、明らかに廉価に作れるはずのシングルVolariのボードについても、その性能と価格のバランスが期待されるところだ。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

ASCII.jpメール アキバマガジン

クルマ情報byASCII

ピックアップ